岸田文雄政権が2022年を「スタートアップ創出元年」と位置づけ、経済産業省は4月に「スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンス」を取りまとめた。経団連も今年3月に「スタートアップ躍進ビジョン」を公表するなど、官民で起業を促すムーブメントがまさに今、起きつつある。
前編に続き、経済産業省でスタートアップ支援活動のキーマンとして知られる経済産業政策局新規事業創造推進室長の石井芳明氏に、スタートアップ創出支援の現状とこれからを聞く。

前編では「上場後も成長できるのが『よいIPO』」と話されていました。そこで石井さんに、3つ目の課題意識について伺います。上場後に成長が鈍化する企業と、さらに成長できる企業。その違いはどこにあるとお考えですか。
石井芳明・経済産業政策局新規事業創造推進室長(以下、石井氏):成長し続けている企業に共通する特徴は、CEO(最高経営責任者)やCFOなどの経営チームの目線が高い点でしょうか。それと上場後も資金調達の選択肢を広げて、色々な手法を使って資金を集め、成長につなげています。M&A(合併・買収)にも積極的に取り組んでいますね。M&Aについては環境を整えるのが今後の課題でもありますが、それができれば、うまく活用する企業が増えるはずです。
買収する側としてM&Aを活用し成長していく企業が増えていくことは、スタートアップのエコシステム(生態系)の強化につながりますね。同時に環境がさらに整えば、買収される企業にとってもM&Aはますます有望な選択肢になっていくのではないでしょうか。未上場の企業がVC(ベンチャーキャピタル)などからリスクマネーを調達した場合には、IPOかM&Aかどちらかの出口戦略を選択しなければなりません。ただ、上場準備を進めていれば途中でタイムリーにM&Aにかじを切ることができますが、M&Aを前提に準備を進めているなかでIPOを目指そうとなると数年単位で時間のロスが生まれます。このようなナレッジが共有されて理解の底上げができれば、状況は大きく変わってきます。
石井氏:確かにそうやって視野を広げると、M&Aも増えてくると思いますね。
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