新株発行によってリスクマネーを調達することが、企業成長のドライバーとなると考えている方が多いかもしれませんが、必ずしもそうとは言い切れません。株式数が増えることによって1株当たりの価値が希薄化されてしまう可能性や、特定の投資家が大きなシェアを占めるとその意向に縛られることにもなりかねないだけに、慎重に考えるべきでしょう。

 重要なのは将来に向けての資金調達の選択肢、ひいては経営の選択肢を確保することです。例えば、いきなり発行済み株式数の50%超を特定の株主に持たれてしまうようなことは特殊な事情がない限り避けるべきです。一度誰かの手に渡った株式を買い戻すことは非常に困難。その時点で選択肢が失われてしまいます。資本政策は原則として後戻りできないことを念頭に、慎重に実施することが必要です。

 新株の発行よりも金融機関から融資を受ける方がよいケースもありますし、両方の方法を同時に行うことも考えられます。重要なのは、資金調達コストを考えながらキャッシュ・フローをどのようにコントロールするかであり、CFOの腕の見せどころとも言えます。

ステージによって調達方法を選択する

 資金調達方法を選定する際の重要なポイントとなるのは、ビジネスモデルや成長ステージ、資金調達環境などです。ビジネスモデルによってキャッシュ・フローの動きは違いますし、成長のステージによってお金の使い方が変わります。金利などの資金調達環境によっても判断が変わってきます。

 金利が安ければ、金融機関からの融資を受けて、希薄化を防ぐという選択肢もあるでしょう。しかし、借入金額によっては、自己資本比率低下などによって追加の借り入れができなくなる局面もあり得ます。

 また、ビジネスモデルやプロダクトについて試行錯誤を行うような企業ステージでは、融資ではなく、リスクマネーの提供者である投資家から資金を調達するという考え方もあります。

 さらに細かいメッシュで見ると、お金の色は誰から調達したのかという「人」のレベルでも異なってきます。投資は会社に対する理解度、会社の将来性の評価、ビジネス環境、組織力などに加え、投資を判断する「人」の先見性やリスク許容度に左右されます。

 昔はいくら調達したかという金額面が注目されることが多かったのですが、資金調達環境が改善している今は、どのファンドから調達したのか、ファンドの誰が投資判断をしたのかというレベルまで注目されるようになってきています。人気のキャピタリストは将来性のある企業を見いだす選球眼に優れ、企業の成長を後押しするサポートを提供するので、企業側としてもその人に担当してもらいたいと希望するケースが増えているのです。

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