
スタートアップの課題の一つに挙げられるのが、ファイナンスです。キャッシュ・フローのマネジメントは、CFO(最高財務責任者)に期待される最も重要なミッションです。どこから、いくら、どうやって資金を調達するのか、そして資金をどのように投資するのかを決定していきます。
企業の資金調達環境は、10年前と比較して大きく改善しています。私が証券会社に入社した2005年ごろはIPO(新規株式公開)が盛り上がっていましたが、2008年のリーマン・ショックで状況が一変し、ベンチャーキャピタル(VC)などのファンドの資金も細ったために、資金調達面で大変厳しい時代が続きました。
しかし、それから数年後に当時未上場会社であったメルカリの大型資金調達の成功で、日本におけるスタートアップに対する見方が変わりました。そして、メルカリやラクスルなどのIPOの成功によって日本のスタートアップへの評価が見直され、VCにも海外の資金が集まるようになってきました。この頃から企業の資金調達環境が大幅に改善され、今では資金を集めること自体は以前と比較して難しくなくなっています。
その上で、どのような調達方法を選択するかがとても重要になってきているのです。資金調達の選択肢の中から何を選ぶのか、そして誰から調達するのかによって、企業の将来が大きく変わってくるからです。
何色のお金を選ぶかで企業の成長速度が変わる
よく、「お金に色はない」と言われますが、CFOの立場から見るとお金にはそれぞれ色がついています。代表的な資金調達の方法は銀行などの金融機関から借り入れを行う方法と、自社の株式を発行して投資してもらう方法です。この2つでは資金調達コストや要求される内容が異なります。お金の出し手の属性が違うからです。
金融機関からの借り入れの資金源は預金です。銀行が預金者から預かったお金を融資して運用しています。融資は金利を稼ぐことで成り立っています。現在は、財務体質によっては低金利で融資を受けることができますが、融資ですから返済しなければならない有利子負債です。
一方の新株の発行による資金調達の資金源は投資家です。投資家の目的は文字通り、投資をしてリターンを得ることです。返済の義務はありませんが、一般的にはキャピタルゲインなど大きな見返りがあることが期待されています。
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