(写真=的野弘路)
(写真=的野弘路)

 証券会社時代にアドバイザーとしていろいろな企業を定点観測していて、不思議に思っていたことがあります。ビジネスを取り巻く環境は変化していないのに、業績が低迷していく企業があったことです。

 当時は、明確な原因を見つけることができませんでしたが、事業会社での経営経験を通して一つの解にたどり着きました。実は「組織崩壊」が起きていたのです。こうした企業に共通していたのは社内で不協和音が生じ、モチベーションが下がったり、キーマンが退職したりするなど、組織力が低下していたという事実です。

 今、CFO(最高財務責任者)として組織力の重要性を実感しています。企業はプロダクトやサービスを通して社会に価値を提供していますが、それらをつくり出すのは「人」です。人が生き生きと働くことこそが、プロダクトやサービスのブラッシュアップにつながるのです。つまり、プロダクト・サービスと組織力の両輪があって、企業は初めて成長できるということになります。

組織力の低下は時間差で業績に表れる

 事業の特性として、人や組織への依存度の大小によって組織崩壊が表面化する時間軸は異なります。組織の異変が財務諸表に反映されるのには一定の時間がかかるのです。タイムラグがあり、気がついた時には既に手遅れになっている可能性もあります。

 そこで大事になるのが、財務諸表だけでなく非財務指標に目を向けることです。組織力が低下して人が辞めると、人件費が減って一時的に利益が増えるかもしれません。しかし、将来の売り上げが毀損された状態になってしまいます。

 組織力低下の原因の多くは、経営陣とメンバーとの間で考えや認識が乖離(かいり)していることにあります。経営陣が組織の状況を把握しているつもりでも、課題はリアルタイムに変化しています。課題に気づかず放置しておくと、組織崩壊がひそかに進行してしまいます。組織力という非財務指標をタイムリーに把握することが重要なのです。

 非財務指標をタイムリーに把握する難易度は、企業の規模にも関係します。経営トップが創業者で組織のメンバー全員を見渡せる「ワンフロアカンパニー」であればリアルタイムに変化を察知できる可能性が高いでしょう。しかし、“50人の壁”などといわれるように規模が大きくなれば、経営チームをつくるなどの工夫が必要になります。

 リモートワークになるとさらに難しくなります。直接会って話をしたからこそ理解できたことが分からなくなり、組織の状況を簡単には把握できなくなるからです。ウィズコロナのニューノーマル時代では、さらに工夫が求められるのです。

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