可視化の難しい「非財務指標」

 ここまでの話で財務諸表だけでなく、働きがいなどの組織の状況を示す非財務指標の重要性はお伝えできたかと思います。ただし、既に共通言語として確立されている財務諸表とは違い、非財務指標は可視化することがそもそも困難です。

 組織は経営者と従業員、みんなでつくっていくものであり、課題があればそれを解決するための最適解を全員で求めていく必要があります。そこで、組織の状況を正確に把握し、適切な対応を実行していくために様々なアプローチが生まれました。

 その一つとしてここ数年注目されているのが「エンゲージメント」です。会社と従業員の関係性を可視化するもので、当社でも「Wevox(ウィボックス)」というツールを提供しています。

 エンゲージメントの状況を定量化することには大きな意味があります。今まで勘やセンスという暗黙知に頼ってきた企業経営を可視化することで、再現性を追求できるようになるからです。

 また、施策が本来の目的にあった効果を上げているかどうかを検証することもできます。例えば、相互理解のアプローチとされる「1 on 1ミーティング」を実施している企業で本当に相互理解が進んでいるかどうかが、エンゲージメントスコアから読み取れます。

 上司がよかれと思って実施していても、部下は必要としておらず、かえって働く意欲を低下させてしまうこともあります。どんな有効な手法でも、やり方やチームの特徴によって効果は変わってくるものなのです。可視化できていないと有効か否か判断がつかないままになります。

 もちろん、組織崩壊を防ぐという本来の役割も果たすことができます。近年、ベンチャーキャピタル(VC)とプロジェクトを組んで、今、その検証にも取り掛かっています。

「未来を創る」ための要素は常に変化する

 組織状態の良しあしは大企業でも極めて重要な要素ですが、スタートアップでは構成人員が少ないからこそ影響が大きく、その重要度は極めて高いといえます。今、VCに期待される役割は、組織をどうつくるかというところにまで広がっています。

 経営陣と二人三脚で組織づくりに取り組む際、非財務指標である人的資本の状況をリアルタイムで可視化することができれば、過去のデータやトレンドと比較して異変を察知し、組織崩壊が起こる前に適切な対応策を打つことができるようになります。だからこそデータを蓄積していくことと定点観測に価値があるのです。

次ページ 人的資本の可視化で企業価値は正確に測れる