自社資源の有無によって分かれる選択肢

 協調戦略を考えるにあたっては、相互OEMや部品の納入という関係もあるが、企業のバリューチェーン(価値連鎖)に注目してみよう。

 バリューチェーンは、企業の活動の川上から川下までの連鎖を言うが、昔は1つの企業の中でバリューチェーンは完結しているケースが多かった。

 例えば、新薬メーカーで言えば、かつては研究、開発、生産、営業、アフターサービスなどのすべてを自社で持っていた。しかし規制緩和後は、必ずしもすべてを自社で持つ必要がなくなっている。これを機に、CRO(開発受託機関)、CMO(生産受託機関)、CSO(販売受託機関)が成長してきた。こうして現在は、どの機能を持ち、どの機能を持たないかを選択する時代になっている。

 他社と協調する場合、自社でバリューチェーンの機能がすべてそろっている場合とそうでない場合では協調の仕方が異なる。

 必要とされるバリューチェーンの機能を自社がすべて持っている場合は、自社のバリューチェーンの中に競合企業の機能の一部を取り込み、競争しながら協調することが可能である。自社の製品・サービスを販売しながら、競合企業の製品・サービスも併せて販売する例が典型的だ。

 アスクルは、当初は親会社のプラス製品の拡販のために設立されたが、顧客志向を追求した結果、コクヨ、キングジムなどの競合他社の製品もカタログに掲載し、現在は他社品の売上の方が多い。

 一方、業界で必要とされるバリューチェーンの機能を自社ではすべて持っていない場合は、相手企業のバリューチェーンの中に入り込み、協調していく戦略が有効である。例えば、競合企業の機能の一部を代替するビジネスや、これまでなかった機能を追加するビジネスである。

 入り込める部分がわずかであっても、業界の大多数の企業の中に入り込み、その部分で寡占を作れれば利益を生み出すことができる。医薬品の販売データを大量に集めて提供しているIQVIAソリューションズ ジャパン(旧アイ・エム・エス・ジャパン)がその典型例である。ほとんどの製薬関連企業が同社のデータを購入しており、それがないと営業戦略も立てられない。

競合企業と協調し、機能の一部を代替したり、これまでになかった機能を追加したりする戦略もある(写真:Andrei_R/shutterstock.com)
競合企業と協調し、機能の一部を代替したり、これまでになかった機能を追加したりする戦略もある(写真:Andrei_R/shutterstock.com)

 他社と協調するもう1つの視点として、競合企業のバリューチェーンの機能の一部を代替するのか、新たな機能を加えて入り込むのかという選択がある。

 前者は、競合企業のバリューチェーンの形は変えずに、その一部を代替することである。かつては内製化することが当たり前だった機能を、最近ではアウトソーシングするケースも出てきた。例えば、銀行におけるATM、クレジットカード会社におけるプロセシング業務、旅館・ホテルにおける運営などである。

 一方、競合企業のバリューチェーンの中に新たな機能を加えて入り込む戦略では、新たな機能により、中小の企業を束ねたり、新しい顧客接点を作ったりすることが特徴である。

 例えば、営業機能が弱い中小のバス会社が新たに高速バスの事業を始めても、切符を販売することは大変である。そこに楽天バスサービスというウェブ販売の機能を組み込むことによって、切符の販売が飛躍的に楽になった。もし中小のバス会社が自社で切符販売のウェブサイトを立ち上げようとしたら、膨大な投資の割にリターンが少ない。

 中小のバス会社は、楽天バスサービスのウェブ販売の機能を自社のバリューチェーンに組み込むことによって、コストをあまり増やさずに売上増を狙えるようになったのである。

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