③質的限定×量的限定の「ニッチ戦略」

・カスタマイズ・ニッチ

 オーダーメード限定生産のニッチ戦略であり、カスタマイズ・ウォッチのKnotが典型例である。Knotは、日本各地の伝統工芸や技術を用いて、2万通りの組み合わせの中から自分だけのウォッチをオーダーすることができる。

 カスタマイズ・ニッチ戦略の要諦は、いかに顧客側の選択肢を増やしながら、企業側のコストを上げないかにある。Knotでは、通常の時計にある多段階のサプライチェーンをカットすることによって、コストを下げ、納期も短縮している。

・切替コスト・ニッチ

 既存顧客が、後発企業の製品・サービスに切り替えたくても、切替コスト(スイッチング・コスト)が高いために、切り替えられない戦略である。

 ホギメディカルは、もともとは医療用の不織布メーカーであったが、手術室で使うメス、注射器、縫合糸、ガーゼなどを他社から調達し、それを完全滅菌してキット化し、病院の手術室に納品している。

 医療機器としての認可はキットごとに必要になるため、後発企業の参入障壁が高く、いったんホギメディカルのキットに慣れた病院やドクターは、他社キットに切り替えることが難しい。

 以上のように、「ニッチ企業=高い技術を持つ企業」というのは、ニッチ戦略の1つにすぎず、リーダー企業が同質化できないニッチ戦略には、量を限定したり、質を磨いたりすることによって、まだ多くのバリエーションがあるのである。

85の成功事例から見えた不変の法則
ロングセラーを大幅加筆してリニューアル!

 いかにして競争せず、自社の独自性を貫くか。そのための戦略を「ニッチ戦略」「不協和戦略」「協調戦略」の3つに整理して解説。DX(デジタルトランスフォーメーション)やSDGs(持続可能な開発目標)、コロナ禍といった企業を取り巻く環境が激変する中でも、利益率を高める不変の法則を明らかにする。

 好評だったロングセラーの改訂に当たり、企業事例を中心に大幅加筆。有名な企業だけではなく、知られざる中小企業の成功事例も数多く取り上げ、様々な業種、様々な規模の企業のビジネスパーソンが実践できる内容だ。

山田英夫(著) 日本経済新聞出版 2200円(税込み)

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