DX、SDGsなど、日本企業を取り巻く環境は激変している。ところが、横並び志向はいまだ根強く、結果、同質的な価格競争に陥っている。
 不毛な消耗戦から抜け出すためには「競争しない」状態を作ることが重要で、そのための方策には「ニッチ戦略」「不協和戦略」「協調戦略」の3つがある。ここでは「ニッチ戦略」を9つに分類。様々な業界・規模の企業戦略を長年研究している早稲田大学ビジネススクール教授・山田英夫氏の著書、『競争しない競争戦略 改訂版 環境激変下で生き残る3つの選択』(日本経済新聞出版)から一部を抜粋、再編集して解説する。

「質的限定」と「量的限定」の2軸による探究

 従来ニッチ企業と言えば、質的経営資源に優れた企業を指すと考えられてきた。しかし、必ずしも質的に優れなくても、市場の量をコントロールすることによって、リーダー企業に同質化されないニッチ戦略を探ることができる。

 すなわち、「質的限定」と「量的限定」の2つの軸で、ニッチ戦略を探究していくことが可能である。この2つを掛け合わせると、図表1のようになる(なお、図表中の④は、質的にも量的にも限定が弱いため、ニッチ戦略にはなりえない)。

 以下、①→②→③の順に、各象限ごとのニッチ戦略を紹介しよう。

図表1 「ニッチ戦略」の分類
図表1 「ニッチ戦略」の分類
(出所)『競争しない競争戦略 改訂版』90ページを一部修正
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