リーダー企業との戦いを回避 「競争しない」3つの戦略

 リーダー企業に比べて経営資源の劣る企業が生き残っていくには、真正面からリーダー企業と戦うのは得策ではない。

 そこには、より強い者と戦わない戦略をとるか、より強い者と共生を図るかという2つの選択肢がある(図表1)。前者は「(競争しないで)分けてこう」という「棲み分け」の発想であり、後者は「(競争しないで)和していこう」という「共生」の発想と言える。生物の世界でも、ある種が生存するためには、この「棲み分け」と「共生」が必須である。

図表1 「競争しない競争戦略」の分類
図表1 「競争しない競争戦略」の分類
(出所)『競争しない競争戦略 改訂版』48ページ
[画像のクリックで拡大表示]

「棲み分け」で競争を避ける――「ニッチ戦略」「不協和戦略」

 「棲み分け」が可能になるためには、リーダー企業が同質化できないことが必要である。そのためには、

①リーダー企業が持つ経営資源と、当該企業がしかける市場とが不適合になる場合
②当該企業がしかける競争のやり方と、リーダー企業の経営資源もしくは戦略が不適合になる場合

の2つがありうる。

 ①の市場との不適合とは、リーダー企業が持つ経営資源から見て、当該企業が開拓した市場が規模的に小さすぎて、そこに参入すると、リーダー企業の高い固定費により赤字になってしまう場合や、その市場を開拓するための経営資源が非常に特殊で、リーダー企業は相対的には豊富な経営資源を持っているが、そのための資源を今から保有するのは割に合わないような場合に発生する。

 その例としては、製薬業界リーダーの武田薬品工業に対して眼科領域に特化した参天製薬、大日本印刷、凸版印刷に対してディスクロージャー書類に特化したプロネクサス、セブン-イレブンに対して北海道に特化したセイコーマート、日本生命保険に対して税理士チャネルを固めた大同生命保険などが挙げられる。

 こうした戦略は、一般に「ニッチ戦略」と呼ばれている(図表2)。

図表2 「ニッチ戦略」の図式
図表2 「ニッチ戦略」の図式
(出所)『競争しない競争戦略 改訂版』46ページ
[画像のクリックで拡大表示]

 上記②の競争のやり方との不適合とは、当該企業のとった戦略に同質化をしかけると、リーダー企業が保有する経営資源や、リーダー企業がこれまでとってきた戦略との間に不適合が生じるケースである。リーダー企業が持つ「資産」が、事業を進めるにあたって「負債」になってしまう戦略や、リーダーが進めてきた戦略と逆行するような戦略が、これに当たる。

 例えば、年齢よりも若めの訴求が常識だった女性ファッション通販で、年齢相応の訴求をしたドゥクラッセ、営業職員を持たず保険料の内訳を開示したライフネット生命保険、広告掲載料課金のリクルートに対して、成功報酬制をとったリブセンスなどがこうした例である。

 これらの戦略は、リーダー企業内にジレンマを起こすことが特徴であることから、「不協和戦略」と呼ぶ(図表3)。

図表3 「不協和戦略」の図式
図表3 「不協和戦略」の図式
(出所)『競争しない競争戦略 改訂版』47ページ
[画像のクリックで拡大表示]

次ページ 「共生」で競争を避ける――「協調戦略」