優秀な人材ほど働く場所を固定されるのを嫌がる

 これだけリモートワークが浸透した時代に、組織の能力として「リモート・リーダーシップ」が欠如していることは、とても大きな問題です。

 下のグラフを見てください。「在宅勤務の生産性はオフィス勤務よりも低い」という回答が日本は40%と、他国に比べてダントツに高いことがわかります。「低い」と感じる理由としては、通信環境やオフィス機器等への投資が不十分であることなども挙げられていますが、一番の原因は「リモート・リーダーシップ」がきちんと育っていないことにあると思います。

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 この前提に立つと想定されるのが、新型コロナウイルスによるパンデミックが収束した時点で、マネジメントの問題から「オフィスに戻ってこい」と社員に要請する企業が日本では多いのではないかということです。

 ところが、優秀な人材ほど、自分が快適に過ごせる場所でリモートワークできる企業や仕事の選択肢は広がっていますから、市場価値の高い人から順に離れていくでしょう。現に、そうした人材はすでに都心を離れ、自分の好きな場所に土地を購入して、住まいを整え始めています。

 リモートワーク時代に苦しむことになる日本企業は、相当あるだろうと思います。苦しみの原因は2つあります。1つ目はマネジメント能力の低さ、2つ目はエンゲージメントの低さです。

 マネジメント能力の低さについては、すでに書いた通りです。目の前にいない人たちを組織としてある方向に引っ張っていくマネジメント能力が、先進国の中で際立って低いのが日本です。エンゲージメントの低さとは、要は自分の仕事の意味合いがわからず、やりがいが感じられないということです。

 これは非常に深刻な問題です。

 在宅勤務中、始業時間になればなんとなくパソコンを開いて前に座ってはいるけれども、仕事そっちのけで画面でマンガを読んだり、動画を見たり、デイトレードをしたりしていてもわかりません。そうすると、社員がどのくらいの頻度でキーボードを打っているか、一日に何通メールを出しているかなどを計測して監視を強める企業が出てきます。

 結果、優秀な人材ほど会社からの監視を嫌いますから、どんどん辞めていくことになるでしょう。最終的に会社に残るのは、監視の目をかいくぐってできるだけ仕事をせずにぶら下がってやろうというピラニア人材ばかりになります。

 歴史上初めて、会社が従業員に搾取される時代がやってくるわけです。

 この状態を放置したままでは、10年後この国は大変なことになっていると思います。通勤に費やしていた時間を有効に使って、自分が本当に心地のよい場所で濃度の高い仕事をする人と、本業の時間さえサボってパソコンの前でスウェット姿でマンガを読み続けている人に二極化するでしょう。

 現に、コロナ禍でリモートワークが浸透してから急激に多忙になった人が僕のまわりにいます。

 次のミーティングに瞬間移動できるので、仕事の生産性が何倍にもなって非常に充実しているそうです。

 日本の場合、毎日オフィスに物理的に集まることが、一つの社会資本になっていたのかもしれません。日本人は「恥ずかしい」という感覚が強いので、たとえ仕事にやりがいや意味を感じていなくても、オフィスにいて目の前に上司や同僚がいる以上、働いてしまいます。仕事をせずに怒られたり、出世で負けたりするのは「恥ずかしい」から、やる気はなくても頑張ってしまうのです。

 そうした「恥の文化」が、腐っても日本をGDP(国内総生産)世界3位の国にしてきたとも言えます。ところが、リモートワークの浸透によってこの社会資本が失われてしまったら、大変なことになります。その意味で、企業としても今、大きな転換点を迎えているのです。

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