2050年のカーボンニュートラルに向け、日本でもあらゆる産業界が脱炭素社会の実現に動き始めている。世界各国の投資が「グリーンリカバリー」「グリーン成長」に傾いており、脱炭素に貢献する戦略・取り組みが見られない企業は今後、経済圏からはじき出され、淘汰されかねない。一方で、カーボンゼロを実現するための仕組みを世界中の企業が必要とする中で、クリーンエネルギーなどの技術や脱炭素を支援するサービスなど、様々な領域で商機が生まれている。

 日経ビジネスLIVEでは、21年11月と12月に「ゼロカーボノミクスを勝ち抜く経営ビジョン~日本企業はどう取り組むべきか~」と題したウェビナーを開催した。

 Day2の12月2日には、ブラックロック・ジャパン社長CEO(最高経営責任者)の有田浩之氏と、野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミストである木内登英氏が、「ゼロカーボン時代、資金調達はどう変わるか」をテーマに語った。収録したアーカイブ動画とともにお伝えする。(構成:森脇早絵、アーカイブ動画は最終ページにあります)

武田安恵・日経ビジネス記者(以下、武田):脱炭素時代の到来によって、今、企業の資金調達環境が大きく変化しています。ゼロカーボンに向けた取り組みで出遅れたり、ESG(環境・社会・企業統治)関連の情報開示に後ろ向きな企業は、金融市場で大きなハンディを背負うことにもなりかねません。これからの時代、投資家や金融機関から評価され、選ばれるためには、企業は具体的にどのような条件をクリアしなければならないのか。また、日銀や金融庁など金融当局は、脱炭素時代の企業の資金調達にどのように関与しようとしているのか。本セッションでは、専門家のお二人を交えて皆さんと考えてみたいと思います。では、有田さんからよろしくお願いいたします。

有田浩之・ブラックロック・ジャパン 社長CEO(以下、有田氏):本日は、脱炭素時代における新たな金融の在り方についてお話しいたします。まずは、気候変動の金融に対する影響ですが、足元で地殻変動を伴う金融の見直しが起こっています。

 そもそも金融とは、経済の中で血流の働きをするものです。従来は、資金の出し手である預金者から、銀行が預金という形でお金を集める。それを産業界や企業に融資として貸し出して、投下していく。こうすることで、経済の発展がもたらされていたわけです。

 ところが、どの先進国においても、経済がある程度成熟してまいりますと、今申し上げたような預金、貸し出し、その間にいる銀行という金融の仕組みが、投資家、株や債券の発行体、その間をつかさどる運用会社という仕組みへと変遷してきていると思います。

 つまり、金融の仕組み自体が、銀行を中心としたライアビリティ・マネジメントから、運用会社を中心としたアセットマネジメントに移り変わってきている。この点を前提にして考えると、気候変動リスクは非常に大きな投資リスクの一部であると考えられます。自然災害が起きたときに、その影響をどれだけ企業あるいは産業が被るのか。そういったものを細かく分析していかなければ、お客様に適切なリターンをお返しすることができないのです。

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