スマホに取って代わられたのは、チューインガムだけではないですが、チューインガムは同じ食品カテゴリーで競争しているだけでは売り上げが取れない時代になりました。これが新しい現実であり、現実が変わればライバルも変わるのです。

 20世紀には想像できませんでしたが、今はデジタル化が進み、ライバルとは思いもしなかった競合が登場し、消費ががらりと変わる時代です。だから20世紀と同じビジネスモデルでは通用しないのです。

周回遅れのマーケティング

 僕は、マーケティングの原点は、こういう時代の変化の中で顧客の問題を見つけ、それを解決することだと思います。これだけは時代が変わっても変わりません。

 この観点から、新型コロナウイルスの感染拡大という事態は、「顧客の問題解決をするのがマーケティングで、それができた企業が消費者から支持を得る」という当たり前のことを思い起こさせてくれるきっかけになるものだと言えます。

 世界の中で日本企業のマーケティングは周回遅れでしたが、コロナ禍をきっかけに経営者の目が覚め、新しい変化に対応ができるようになれば、今後にいちるの望みが持てるでしょう。

 では具体的にはどうすればよいのか。それを考えるヒントとして、20世紀の日本がつくった「日本株式会社モデル」について考察してみましょう。

<span class="fontBold">ケイアンドカンパニー代表取締役社長<br />高岡浩三氏</span><br />1983年神戸大学経営学部卒。同年ネスレ日本入社、各種ブランドマネジャーなどを経て、ネスレコンフェクショナリーのマーケティング本部長として「キットカット」受験生応援キャンペーンを手がける。2010年ネスレ日本代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)に就任。「ネスカフェ アンバサダー」で日本マーケティング大賞受賞。20年3月ネスレ日本を退社し現職。
ケイアンドカンパニー代表取締役社長
高岡浩三氏

1983年神戸大学経営学部卒。同年ネスレ日本入社、各種ブランドマネジャーなどを経て、ネスレコンフェクショナリーのマーケティング本部長として「キットカット」受験生応援キャンペーンを手がける。2010年ネスレ日本代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)に就任。「ネスカフェ アンバサダー」で日本マーケティング大賞受賞。20年3月ネスレ日本を退社し現職。

 僕が講演でよく話すのは、この日本株式会社モデルの不思議さです。

 第2次世界大戦で負けた日本は米国から資本主義制度を導入し、会社をつくって産業を復興していこうとしましたが、一番肝心な投資家がいなかった。だから会社をつくろうにもつくれない状態でした。

 他の新興国だったら外国資本が入ってきます。外資に頼らざるを得ない状況になるわけで、多くの新興国は実際そうなっています。そして外資系企業がその国の市場でシェア1位を取るわけです。

 ところが日本には外資系でトップシェアの企業って、ほとんどない。それくらい日本は特異な国なのです。

 ネスレ日本も、食品業界では売り上げで20位に入るか入らないかくらいです。

 僕はこれがなぜなのかをずっと考えてきました。結局、鍵を握っていたのは銀行であり、メインバンクシステムという日本独自の制度が、これを可能にしたのだと理解しました。

 終戦後、投資家はいないが、外資に乗っ取られるのは嫌だと考えた日本政府は、銀行に目を付けた。多くの銀行に投資をさせ、新興会社の大株主にして、それで経済を回し、発展させようとした。

 一方で銀行も、投資先は中小企業ばかりですから、配当をよこせとも言わず、とにかく欧米に追い付け追い越せを共通の目標にして、売り上げ至上主義で成長してくれと。そのようにして企業の背中を押したわけです。

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