潤沢なEV補助金

 こうした背景から、中国政府は世界で最も積極的と言えるEVの普及支援を行ってきた。その中核は直接的な補助金であり、2009年からEV1台当たり数千~数万元(10万~100万円程度)を車両メーカーに提供している。「新興EVメーカーは補助金で会社が運営されている」といわれたほど手厚い支援とされている。

 EVがある程度普及した2015年には、「2016‐2020新エネ車普及応用財政支援政策に関する通知」を公表。2016年から2019年まで補助金を毎年20%ずつ削減し、2020年には完全に無くすとした。

 実際には、新型コロナ禍の中で自動車の購入を促すために補助金制度を延長しているが、中国のEVは補助金なしでも十分にビジネスが成立する段階に来ている。

「すぐ買える・毎日乗れる」価値

 もう1つ、中国ならでは促進策もある。増え続ける自動車の数にインフラ整備が追いつかず深刻な渋滞が日常化している中国では、多くの都市がガソリン車のナンバーの発行を制限している。車を持つには抽選や入札でナンバーを取得しなくてはならない。

 それに対してEVには専用のナンバープレートを制限なく発行しているのだ。北京のような大都市では「毎日運転可能なナンバー番号が決まっている」といった規制もあるが、EVには「運転日の制限をなくす」という優遇策を講じている。自動車の保有のしやすさと使い勝手の両面での、手厚いEV支援と言えよう。

世界の急速充電器の80%が中国に

 さらに、EVの実用性確保のために欠かせない充電設備の増設にも力を入れている。2020年までに設置された公共充電器は累計で49.8万基。この数は世界全体に設置されている充電器の50%以上を占めている。また中国は利便性の高い「急速充電設備」にも力を入れており、この設置数シェアは世界の80%を超える。

EV向け急速充電器設置台数
EV向け急速充電器設置台数
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 これらのほぼ全てが国の負担で設置されたものだが、最近では地方自治体による設置も増えている。北京市は2020年、充電設備5万基増設を目指して公共機関に対する補助金を発表。充電設備メーカーには1基20万元(約300万円)/年を上限とする報奨金を支給するという政策を打ち出した。上海市も3000基の増設を宣言するなど、国に加えて地方政府も充電設備の整備を進めている。

 こうした政策により中国のEVの販売台数は順調に伸び、2014年に7.5万台だった年間販売台数は2019年に120万台となった。EVの保有台数は540万台に達し、中国は世界のEVの半分以上を占める圧倒的な市場となった。

EVの保有台数
EVの保有台数
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 2020年は新型コロナの影響で上半期の販売台数が急減したものの、他国に先んじた感染の抑え込みで経済活動が盛り返し、下半期の販売台数は前年並みの110万台まで回復した。

 2010年に中国政府が公表した「2020年時点のEVの累計販売台数を500万台」という目標は見事に達成されたのである。

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