シェアトップ10の8社が中国

 太陽光発電市場における中国メーカーの強さは恐ろしいほどだ。

 中国メーカーは世界最高のコスト競争力と、世界最大の国内市場を背景に市場を席巻してきた。2011年の世界トップメーカーは尚徳太陽能電力(サンテックパワー)、2012~13年には英利緑色能源(インリー・グリーンエナジー)、2014~15年には天合光能(トリナ・ソーラー)、2016~19年には晶科能源(ジンコソーラー)と、中国メーカーが入れ代わり立ち代わりに首位の座を奪い合ってきた。

 2019年には世界シェアのトップ5を独占、トップ10のうち8社を中国メーカーが占めるという圧倒的な地位を築いている。2019年に世界全体で販売された太陽光発電パネルの8割弱が中国製だった、という驚きのデータもある。

太陽光パネルメーカー出荷量ランキング(2019年)
太陽光パネルメーカー出荷量ランキング(2019年)
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既存技術による大量生産で席巻

 中国が世界を席巻したきっかけは1人の留学生だ。

 江蘇省の農村出身の施正栄氏は、オーストラリアの大学で電気工学の博士号を取得。帰国後2001年に江蘇省無錫市でサンテックパワーを創業したものの、事業はまったうまくいかなかった。

 しかし、市場価格よりも高い価格で太陽光による電力を買い取る、固定価格買取制度(FIT)を導入していたドイツ市場に活路を見いだし、2004年にシェア拡大に成功。創業からわずか4年の2005年に、ニューヨーク証券取引所に上場した。

 サンテックの成功を見た中国メーカーは大挙してドイツ市場に参入。河北省のベンチャー起業家、苗連生氏が創業したインリー・グリーンエナジー、晶澳(ジンアオ)太陽能(JAソーラー)といった企業だ。

 中国メーカーがこれほどの躍進を遂げたのは、日本や欧州で技術が確立していた単結晶や多結晶シリコン系パネルを「半導体製造装置メーカーが提供する製造装置を使って大量生産する」ことに専念したからだ。

 分かりやすく言えば、新技術開発には目もくれずに汎用化した技術に特化し、大量生産により徹底的に低価格化したのだ。

 当初は発電量の低下、発電停止などの悪評もあったが、圧倒的な低コストで支持を得て市場を席巻した。市場拡大に伴ってドイツの太陽光発電の買取価格が下がるのを見て、スペインとイタリアがFITを導入すると、中国メーカーはすかさず両国市場に参入。一気にシェアを奪った。

絶妙のタイミングでのFIT導入

 2010年ごろ、FITによる太陽光発電の導入が一段落して需要が低下すると、EUの太陽光発電市場は減速。港には中国製の太陽光パネルの在庫が山積みになった。

 すると、翌2011年、中国の国家発展改革委員会は、国内市場にFITを導入。中国メーカーを支えた。青海省、甘粛省などの広大な原野に数万から数十万kWのメガソーラーが次々と建設され、中国国内の太陽光発電市場は巨大化した。

 欧州市場で育ち、中国市場でさらに力をつけた中国メーカーの競争力は圧倒的なものとなり、中南米、中東・北アフリカ、オーストラリア、トルコなど世界中で太陽光発電事業を拡大させている。

 東日本大震災後の混乱の中、40円/kWhという破格でFITを導入した日本市場も、中国メーカーの格好の標的となった。政府は日本メーカー重視の姿勢を示していたが、投資側からすれば海外で十分な実績を重ね、価格も安い中国メーカーのパネルを採用しない理由はなかった。

 2021年の現在では、日本市場における中国メーカーのシェアは50%を超えている。今後、パリ協定の影響により、新興国、途上国での太陽光発電市場が拡大するが、中国メーカーの席巻を阻む勢力はまったく見当たらない。

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