日本でもあらゆる産業でカーボンニュートラル(脱炭素)を強く意識した動きが加速しています。日経BPではこうした新しい経済潮流をテーマに、日経ビジネス、日経クロステック、日経BP総合研究所の共催で、11月25日(木)から4週にわたってオンラインセミナー「ゼロカーボノミクスを勝ち抜く経営ビジョン ~日本企業はどう取り組むべきか~」を開催いたします(視聴無料、事前登録制・先着順、記事末尾に詳細)。

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菅義偉前首相のカーボンニュートラル宣言によって、日本は脱炭素という経済競争へと踏み出した。欧米は新型コロナウイルス禍からの経済復興の中心に脱炭素を据え、100兆円規模の予算を投入していくが、日本の予算規模はわずか2兆円。この数字の差にはどんな意味があるのか。このほど日本総合研究所の井熊均フェローら4人がまとめた新刊『脱炭素で変わる世界経済 ゼロカーボノミクス』(11月3日発売)から、一部を抜粋して紹介する。

2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言した菅義偉・前首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言した菅義偉・前首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 習近平主席のゼロカーボン宣言の翌月となる2020年10月、菅義偉首相(当時、編集部注)は臨時国会の所信表明演説で、2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言した。

 中国の後じんを拝したにもかかわらず、菅首相が宣言に踏み切ったことには驚きの声が上がった。というのも東京電力・福島第1原子力発電所の事故以来、ゼロカーボン化で最も重要なエネルギー政策において、日本は迷走を続けてきたからだ。

再エネも原子力も進まず

 事故後の混乱の中で導入した固定価格買取制度(FIT)は、ほとんどCO2を排出しない太陽光発電の大量導入を実現したものの、このままでは2030年までに40兆円もの国民負担が生じるという状況にある。そこまでの巨費を投じているにもかかわらず、日本メーカーがかつて首位を独走していた太陽光発電市場は、中国メーカーに席巻されてしまっている。

 もう一方の脱炭素電源である原子力発電は、福島第1原発事故の明確な原因究明がないまま、国民の理解を得られないでいる。結果として、事故から10年たっても再稼働を実現した原発は、全体の半分以下の9基にすぎない。

 また、2018年のエネルギー基本計画では、国際的な評価を得られていない「2030年のエネルギーミックス(電源構成の計画)」の見直しもできなかった。まったく実現のめどのない原子力発電の再稼働計画を前提に脱炭素を進めるという、「問題の先延ばし」としかいえない状況が続いていたのだ。

 こうした五里霧中ともいえる状況でのゼロカーボン宣言だったからこそ、多くの驚きの声が上がったのである。

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