ここ数年のZ世代のキーワードは「自分らしさ」でした。

 彼ら彼女らは写真共有アプリのInstagram(インスタグラム)で自分の世界観を決めて発信をしたり、働き方を自分で細かく調整したりするなど、今もいろいろな場所で自身のアイデンティティーを表現することにたけている世代だといわれています。

(写真:的野 弘路)
(写真:的野 弘路)

 しかし、2022年を振り返ってみると、その「自分らしさづくり」にさえ、Z世代が疲れてきた印象を受けます。次々と登場するSNS(交流サイト)サービスなどによって、Z世代が自分の世界観を外に向かってアピールする「場所」が増え続けています。一方で、どこに行っても「自分を何かの形で表現しなければいけない」風潮が広がり、疲弊する層も出てきました。

 この1年で、新たな潮流によって存在が目立ち始めたのが、頑張りすぎないZ世代です。私は「エフォートレスなZ世代」と呼んでいます。

 頑張りすぎないと聞くと、「かなり怠惰で厄介」な若者をイメージする人も少なくないでしょう。ですが、実はそうではありません。そのことをぜひ多くの方に知っていただきたく、今回はZ世代にとっての「エフォート(努力)」とは何かについて、自分なりにまとめます。

ファッションにもエフォートレスの波

 少し前までは、Z世代の世界的なファッショントレンドは「Y2K」といわれていました。Y2Kは「Year 2000」の短縮形で、00年代初頭のファッションを指します。厚底ブーツやローライズジーンズ、ミニ丈のスカートなど、派手なスタイルが特徴的で、Z世代に再燃するムーブメントでした。
 22年はこのY2Kに続き、「スポーツMIX」といわれるファッションも流行しています。

 こちらはY2Kよりも、機能性や動きやすさを重視。ワークウエアのようなカーゴパンツやスウェット素材のジョガーパンツを取り入れ、両手が空くことで便利なスマホショルダーなどカジュアルなアイテムがトレンドになりました。

 背景には、「ファッションでさえも、頑張りすぎずにおしゃれをしたい」という本音があるのだそうです。気合を入れておめかしをするのではなく、家着としても着られる動きやすい服でファッションを楽しみたい。「労力のかからないおしゃれをしたい」という思考もある意味「エフォートレス」だと私は感じました。

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