過程至上主義の究極にある「手作り」
出来上がるまでの過程を楽しみたい、知りたい、というZ世代の過程至上主義の究極的な形として、いっそのこと自分で作ってしまおう、という「手作り」ブームも来ています。
このブームの背景にあるのは、過程至上主義だけではありません。「自分に合ったオリジナルなものを持ちたい」という心理もあるように感じています。トレンドの移り変わりが早く、見た目や持ち物もすぐに没個性になりがちなSNSにおいて、今はやっているものを自分も持つ、というスタイルはもはや変わりつつあります。むしろ、周りの友人が同じものを使っているからこそ、トレンドだけにこだわらず「自分に合ったオリジナルなものを持ちたい」と考えるZ世代が多いように思うのです。
特にZ世代が大切にしているのが、「自分でオリジナリティーを作る、生み出す」ということ。何かが出来上がる過程を楽しみ、かつ完成物そのものに対する周りとの差別化を追求した結果、「自分で作る」というちょっとした手作りブームが来ています。実際、コロナ禍以降、TikTokでは簡単に作れるお菓子レシピやアート体験のお店がバズっているのをよく見かけるようになりました。
直近でいえば、「#押し花クッキー」という、花の形をしたクッキーのレシピ動画が流行しています。自分で好きな色を組み合わせ、押し花という名前の通り、コップの底で押さえつけて形成するという簡単な方法がヒットしています。
動画投稿アプリ「TikTok」発のトレンドになりますが、現在ではInstagramユーザーにも徐々に広まってきているレシピになっています。
そのほか、手作りの過程を楽しみつつ出来上がりのオリジナリティーを追求できる「artbar」も有名です。artbarとは、ドリンクを片手に筆を使わずコップに入った絵の具をそのままキャンバスに垂らして作る「たらしこみアート」を体験できる施設です。
たらしこみアートの面白さは、たらしこみ具合で色のグラデーションや模様が変わるため、出来上がりの予想が全くつかない点にあるといいます。完成したキャンバスは後日自宅に送られ、そのままインテリアとして飾れることもポイントです。
上記のようなトレンドのように、「オリジナリティーを出せるかどうか」「自分が本当にいいと思ったか」といったポイントを基準に消費をするZ世代の傾向は今後ますます強くなってくるのではないかと思います。
企業が打ち出すプロモーションコンテンツに敏感なZ世代だからこそ、安易に共感を求める言葉で訴求したり、見た目が美しいだけだったりするプロダクトやサービスはますます懐疑的に思われるようになっていきます。私自身も、Z世代に近いサービスを展開している身として、誠実に真摯に、事業と向き合っていければと思います。
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