コロナ禍以降、あふれ出たZ世代の「過程至上主義」
プロモーション目的の投稿を見抜けるZ世代が、何をもってリアリティーを感じるか。それは、ライブ映像や生配信といった嘘やごまかしの利かないコンテンツです。
コロナ禍によって、ライブ配信の需要が高まってきていることは皆さんもご存じかと思います。こうした背景に存在するのは、コロナ禍以前よりZ世代が持っていたこの「過程至上主義」ではないかと見ています。
Z世代における過程至上主義とは、先ほども述べたように、完全体の商品を消費するのではなく、それができるまでの「過程」も併せて一緒に消費する、物事の過程に価値を置く考えを言います。
Z世代は出来上がりのパッケージのきれいさ・完成度の高さを見て商品を選ばず、商品が世に生まれるまでの背景を見ようとします。
この過程至上主義によって典型的なのが、オーディション番組によって生まれたアイドルだと私は思います。最近では、サバイバル番組で勝ち上がったメンバーで構成されたユニットがデビューするケースが増えてきました。
サバイバル番組は、アイドル候補生がデビューするまでの過程をドキュメンタリータッチで描いています。視聴者は、番組の中でアイドル候補生が練習を重ねて日に日に歌やダンスが上達していく過程を見届けることができ、最後には投票でどの候補生をデビューメンバーに入れるかを決められます。
視聴者はこうした番組の中で「国民プロデューサー」と呼ばれることも多く、誰をデビューさせるか、その決定権を視聴者自身が握れることに、従来までのアイドルとは違う魅力があります。
最近のオーディション番組で結成されたアイドルとして最も有名なのは「NiziU」でしょう。私も視聴していましたが、彼女たちは決して最初からずば抜けて歌や表現力がうまかったわけではありませんでした。
それが韓国の名プロデューサー、J.Y.Park氏の下で歌やダンスがどんどん磨かれ、彼女たちの顔つきも変わっていく。回を重ねるごとに上達し、あか抜けていく彼女たちの姿を見ると、どうしても応援したくなってしまうのです。ありのままを映す番組を通して視聴者の中で少しずつ育まれるのは、それまでの過程を知っているからこそ生まれる、本物の「推し」の感情でした。
嘘偽りのない、デビューまでのフェアな過程を視聴者が見届けることができる点も、まさに過程至上主義なZ世代に刺さったポイントだったのだと思います。このZ世代の過程至上主義の延長線上にあるのが、私はライブ配信需要の高まりだと考えています。コロナ禍以降、特にライブ配信に着目したコンテンツが支持を集めています。
「THE FIRST TAKE」はその典型的なコンテンツの一つ。今をときめくミュージシャンたちがスタジオに入り、一発撮りの演奏を披露するスタイルが広く話題を呼んでいます。YouTubeチャンネルの登録数は520万人も超えています。今までにない「リアル」がコンテンツとなっているのも、この過程至上主義の志向ともマッチするように感じます。
Powered by リゾーム?