(写真=的野弘路)
(写真=的野弘路)

 Z世代の生き方の多様化は、どうやらキャリア・ライフプランに限った話でもないように思います。その一つに、先の東京オリンピックで活躍された堀米雄斗(ほりごめ・ゆうと)選手の話があります。

 彼は22歳にして2020年東京オリンピック、スケートボード男子ストリートで初代金メダルを受賞したことで有名になった選手です。堀米選手がスケートボードに目覚めたきっかけは、彼が中高生時代、部活になじめなかったことなのだそうです。

 ランキングや競争社会からは無縁で、ただパフォーマンスが「イケてる」「スゲー」といったクールさで評価されるスケートボードに魅力を感じたのではないか?と早川大輔コーチが推測していたことがとても印象に残っています。

 堀米選手はZ世代に当たる年代ですが、彼の話を聞くと、まさに誰かの評価やランキングでトップになるのが目的ではなく、ただ「自分がかっこいいと思うプレー」、バイブスを追求した結果として順位がある、というZ世代らしい価値観の持ち主であると思いました。

変わっている人を否定しない風潮に

 スポーツのみならず、エンターテインメント業界でもそういった価値観が広がりつつあるのではないかと私は推測しています。

 先日実施された「キングオブコント2021」では、決勝に進んだ3組全てが、一風変わった人を受け入れるような、新しいコントの形を見せたことで有名になりました。私はあの放送を見ながら、「お笑いとはかくあるべき」論から脱却して、新しいステージに進んでいるように感じました。

 自分とは違う「変わっている」人を否定しない、そうした他者に突っ込むことなく、むしろ受け入れた上で笑いを取る。Z世代の価値観の影響かどうかはもちろん分かりませんが、今回のキングオブコントを見ながら、同じ方向に向かって社会の価値観が変容しているような印象を受けました。

 もしかすると、今後は各人の表現方法に順位をつけず、ランキング化をしないでそれぞれのあり方を認めるような姿勢がよしとされる時代になってくるのかもしれません。

他者を決めつけず、背中を押す存在でありたい

 たまに下の世代から就職活動の相談を受けますが、私は「そのままでいいよ、好きなことをすればいいよ」と返します。

 たとえ、同じように起業を考えている学生であっても、その人の人生について、私が何かを判断し、「起業たるものこうあるべきだ」といって一方的に決めつけることはできないと思うからです。自分の価値観で他者を縛りたくないという自分の根底にある価値観も、もしかするとZ世代でいうところの「生き方の多様性」に通じるのかもしれません。

 もし、それでも自分がありたい姿や好きなものが分からず、どうしても何をしていいか分からないと悶々(もんもん)としている人がいれば、部活を転々とするように色々試してみればいいんじゃない?と声をかけるかもしれません。実際に行動に移してみなければ、好きか嫌いかも分からないからです。

 もちろん、その人が真剣に自分の好きなものを探したいと思うのであればという前提です。みんながみんな、自分の好きなことを探す必要も、好きなことで生きていく必要もありません。SNS(交流サイト)によって生き方の選択肢を数多く知ることができる一方で、他者の生活が見え過ぎてしまうことで「皆が皆、好きなもので生きていける」という強いメッセージを受け取ることもしばしばあるからです。これは、自分にこれといった好きなものがない人にとって、とても辛いことです。

 どう生きるかの選択肢にあふれている今、何かしらのロールモデルを目標に掲げて「何者かになる」選択ではなく、何を選択すれば自らが「心地よく生きられるか」を考える。それが私たちZ世代なのではないでしょうか。

 私自身、SNSマーケティング以外の好きなもの、好きな事業は何かを今も必死に探し中です。経営者としてもがき、組織を引っ張っていくポジションにはありますが、自分自身は他者の行動を決めつけたり、縛ったりすることなく、その人が踏み出す一歩目の背中をそっと押す存在でありたいなと思っています。

この記事はシリーズ「大槻祐依の「Zの肖像」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。