
FinT(東京・目黒)で代表取締役社長をしている大槻祐依です。早稲田大学在学中に今の会社を起業し、Instagramを中心としたSNS(交流サイト)メディアの運営やマーケティング支援事業を展開しています。この連載では、私から見たZ世代のリアルをご紹介しつつ、自身の考えをつづっていこうと思います。
Z世代の定義は様々ですが、一般的に1990年代半ばから2000年代終盤までに生まれた世代を指す言葉として定着しています。私は1995年生まれでZ世代に入るか入らないかのちょうど境目の世代に当たります。私より少し上のミレニアム世代の影響を受けつつ、下からのZ世代的な価値観にも触れながら過ごしている世代というところでしょうか。
Z世代はマーケティング目線で語られることも多くありますが、案外、コアな価値観は知られていないと感じています。新型コロナウイルスの流行によって時代の過渡期でもある今、若者であるZ世代の価値観は大きく変容しています。
Z世代にSNSがもたらした多様なキャリア観
Z世代はデジタルネーティブ世代といわれていますが、スマートフォンを持ち始めるのと同時に、SNSに親しんできた世代でもあります。社会に出る前に、SNSで出合ったこともない多様な生き方を知ったことによって、自分に合う生き方を「選ぶことができる」ようになっているのではないかと感じています。
例えば、私がまだ大学生だった頃は、経験者の意見やネットのランキングをむやみに信じるキャリア選択が多かったように思います。既に就活の情報サイトでは、自分の所属する大学からのエントリー数が可視化され、求人情報も自分の条件に合わせて一斉で比較・閲覧できるようになっていました。自分の進路を考える際も、同じサークルやゼミの先輩にアドバイスを求めたり、就活情報サイトで人気の企業ランキングを上からアタックしていったりと、割とこれまでとあまり変わらなかったと思います。
しかし、今のZ世代は、自分の身の回りの大人だけではなく、SNSによってもっと広い世界の情報を簡単に手に入れられるようになっています。それは、SNSによって、生き方の多様性に触れたことで、直接関わる人だけではない、新しいコミュニティーに生きる人の生き方をのぞけるようになったということでもあります。
自分の価値観と合う人を自ら見つけ、そこからありたい自分の5歩先の人生を想像できるようになったことで、Z世代が選べる生き方の選択肢は、今、実はかなり広がっているのではないでしょうか。
ソニー生命保険が2021年7月に発表した「中高生が思い描く将来についての意識調査2021」を見ると、中学生、高校生ともに将来の夢のトップは「好きなことを仕事にする」。将来なりたい職業について見ると、男子中学生のトップ、女子中学生の2位、男子高校生の1位にYouTuberがランクインしています。
幼い頃からSNSを通じて自分の趣味で生計を立てているごく普通の人を身近に感じている証左と言えます。
「どう思われるか」ではなく、「どうありたいか」
目の前に選択肢が増えたことで、「新卒はとりあえず大企業に行くべきだ」といった「あるべき論」が崩壊し、それに伴い「唯一無二のロールモデル」が不在になっている現状が見え隠れしています。
社会には様々な大人がいて、様々な生き方がある。これがSNSによって可視化されたことで、「では自分はどうするのか?」という自らの生き方を主体的に思考できるようになったと同時に「考え方はAさん、働き方はBさんがいい」というふうに、なりたい自分を形成するために、自然と要素をミックスできるようになったのではないかと思います。
その結果、起きていることが明確なロールモデルの不在であり、逆に言えば自身のロールモデルのパーソナライズをしようとしているのかもしれません。自分のありたい姿のよいところ取りをして、かいつまんで考えているのです。
特に新型コロナウイルスの流行以降、社会が大きく変化したことにより「あるべき論」の解体は進んだように思います。特に自分の身の回りで言えば、起業の形が変わってきています。
私が会社を興そうと志した8年ほど前、起業と言えば事業をグロースさせ、会社を上場させることが王道の成功モデルとされていました。しかし、ここ数年で起業のあるべき姿が消滅してきています。学生起業家に対する世間の風当たりの強さが弱まり、上場だけが全てではないと捉える起業家が私の周りでも増えてきました。
自分が本当に届けたい一部の顧客だけに、狭く、深くサービスを提供したい、と考える起業家もいれば、上場して国内でも有数の会社規模までに成長させたいと考える起業家もいます。はたまた、フリーランスのプロ集団として起業をする人もいます。
利益や社会的な名誉よりも、自分たちの事業で、人々をもっと幸せにしたい、世界を進化させたい、というビジョンを持った起業家仲間が増えているように思いますし、私自身もそこからたくさん刺激をもらっています。
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