(写真=的野 弘路)
(写真=的野 弘路)

 「推し活」とは自分にとってイチオシのタレントやキャラクター、いわゆる「推し」を応援する活動のこと。2021年の流行語大賞にノミネートされるなど、最近では耳にする機会が増えています。

 ファンになって応援する。この行為自体はZ世代に限らず、以前から存在します。ただ、自分の趣味や嗜好を公にせず、どこかひっそりと自分の中だけの楽しみのように活動していた方が多いのではないでしょうか。ここ数年の変化は、自分の推しを堂々と外に対して示し、それこそが自身のアイデンティティーの一部であると主張するようになったことです。

 推し活のために学校の活動や仕事を頑張れる、推しのためにお金を使いたい――。彼ら彼女らの生活における内発的動機付けは、推し活=推しごと(お仕事)とも捉えられるほど、日常に大きく占めているのです。推し活=生きがいと言えるほど、日常生活での比重が大きくなってきているのです。

 推し活における経済活動は“推し消費”とも呼ばれており、企業側はそのためのマーケティング活動を行ってきているようにも思えます。

ライブ会場より生配信が「身近」

 いつの時代も、好きなタレントやキャラクターが誰にでもいるにもかかわらず、なぜ今Z世代の間での推し活が推しごと(お仕事)と捉えられるほど、日常的にオープンに取り上げられているのでしょうか。

 そこには今と昔の推し活の特徴に違いがありました。

 推し活を始めるきっかけは人それぞれですが、かつてと比べてSNS(交流サイト)が普及し、アーティストやキャラクターとの接触回数が増えたことから、推しが生まれやすくなったのではないかと考えられます。

 Z世代にとって、推しとの出会いの場はテレビに限りません。ユーチューブのおすすめでたまたま見た動画が面白くて推しになったという子たちも多いようです。かつてはテレビや映画などへの出演が基本で、ネットには慎重な姿勢を見せていたジャニーズ事務所所属のタレントも、今ではインスタグラムやユーチューブを積極的に活用するようになりました。

 新型コロナウイルス禍でライブ活動が難しくなったこともあり、アーティストがインスタグラムやユーチューブを活用して生配信をする機会も増えました。生配信で感じる身近さ。これもZ世代ならではの感覚があります。

 社内にいる私より下のZ世代のメンバーは、「生配信で自分のコメントを読んでもらえると近くにいるように感じる。だけれどオフラインのライブなどに参加すると広い会場で自分に気づいてもらえず遠くに感じるのがまたいい」と話します。オンラインとオフラインの意義が反転していることも不思議な現象でした。

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