ちなみに、自社で運営しているZ世代を中心とする女性向けSNSメディア「Sucle(シュクレ)」では、「ご自愛」や「自分磨き」といった、自分の内面に向き合うようなセルフケアやトレンドに関する情報を定期的に発信しています。実際、モーニングルーティンやナイトルーティンなどと同じく、ここ1、2年で一気に支持が広がったコンテンツです。

 朝は早めに起きて、スキンケアやストレッチを念入りにして体のケアをしたり、自分の好きなドリンクを入れてほっと一息をつく時間を持ったりする。退勤後も、午後8時くらいに自宅に帰り、ゆっくりお風呂に入って時間をかけてマッサージをしたり、好きな動画コンテンツを見ながらリラックスしたりする。それがナイトルーティンになっているメンバーもいます。

 自分の自由時間を持てないほど働くこと自体、等身大の自分を大事にするZ世代にとってはナンセンス。まず自分のことを好きでいるため、自分らしくいられるためにも、ときに仕事をセーブしながらきちんと自分に向き合う時間を取っている人が多い印象を受けます。

必ずしもお金持ちになりたいわけではない

 Z世代の「稼ぎ」に対する価値観にも、私はギャップを感じることがあります。私を含めたミレニアム世代以上の世代が無理をしてでも働くのは、少なからず経済的・社会的な充実感を求めていることが背景にあるのではないでしょうか。

 もちろん、Z世代の中でも実力を高めて収入や社会的地位を向上させたい人もいます。しかし、「必ずしもお金持ちになりたいわけではない」という価値観を持つ人が徐々に増えています。

 稼ぎは良いもののハードワークに耐える必要がある仕事と、稼ぎは理想に劣るもののハードワークの必要がない仕事。両者をてんびんにかけたとき、先ほどのセルフケアの観点から後者のほうを選ぶのが、Z世代らしいポイントであるように思います。「無理して働いて大金を稼ぐ」という発想は、等身大であることを大事にするZ世代にとって、もはや彼らの中にはないものなのです。

 私も根性論的な仕事のやり方の中で育った分、この新しい世代の姿勢にとまどいを感じることがたまにあります。しかしそれと同時に、彼らの姿勢を見ながら、私自身も無理をして失敗した過去や、「そういえばあのときつらかったな」と改めて認識することも多くなったのも事実です。

 等身大の自分に素直に従いつつ、自分の無理のない範囲で安定して仕事に向き合おうとするZ世代の仕事観は、従来の組織の生産性の追求だけを見れば正すべきものに映るかもしれません。

 しかし、私たちが上から教わった「むちゃ」を自動的に彼らに強いる前に、まず自分が無理をしすぎていないかを、いちど胸に問いかける必要があるのではないでしょうか。なぜむちゃをすべきだったのか、なぜ今、無理やりでも負荷をかけなければいけないのか。

 会社や個人の成長には多少の負荷が必要です。だからこそ、Z世代に当たり前に無理を強いるのではなく、丁寧なコミュニケーションを取る必要があると感じています。

 これから社会に出てくる新社会人は、こうした自分らしく働ける健康的な仕事観を持つ人が多くなるでしょう。アンハッピーに働くのが当たり前だった今までの日本の働き方に風穴を開けるのは、ひょっとすると彼ら彼女らなのかもしれないな、と思うこのごろです。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「大槻祐依の「Zの肖像」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。