米ウォルマートが展開するメンバーシップ・ホールセール・クラブ(会員制量販店)で、創業者の名前を冠したサムズクラブ。店名にある「サム」とは、ウォルマートの創業者であるサム・ウォルトンのこと(写真:後藤文俊)
米ウォルマートが展開するメンバーシップ・ホールセール・クラブ(会員制量販店)で、創業者の名前を冠したサムズクラブ。店名にある「サム」とは、ウォルマートの創業者であるサム・ウォルトンのこと(写真:後藤文俊)

 日本で、メンバーシップ・ホールセール・クラブ(会員制量販店)と言えば、多くの人がコストコ・ホールセールを思い浮かべるのではないでしょうか。日本には、この業態の店がコストコしかないからです。

 一方、この業態が生まれた米国には、米ウォルマート創業者の名前を冠したサムズクラブもあります。確かに業績でも存在感でもコストコが勝っていますが、サムズクラブには、コストコにはない優位性がいくつもあります。今回は両者を比較することで、メンバーシップ・ホールセール・クラブの本質に迫ってみようと思います。

サムズクラブはカーブサイド・ピックアップに熱心

 米国に600店を展開するサムズクラブの売上高は735.6億ドル(2022年1月期)。1店舗当たり売上高は約1.23億ドル(同)です。一方、コストコは米国に578店、カナダや日本などにも店があり、合計838店を展開。売上高は2227.3億ドル(22年8月期)で、サムズクラブの3倍です。またコストコの1店舗当たり売上高は約2.66億ドルで、こちらはサムズクラブの2.2倍です。

 このように数字の面ではコストコにかなわないサムズクラブですが、会員(利用者)目線で見ると、実はサムズクラブには評価すべき優位性が7つもあります。優位性の1つ目は米国内の店舗数です。コストコも店舗数を毎年増やしていますが、まだサムズクラブより22店舗も少ない。店舗の多さは、便利さに直結する重要な指標です。

 2つ目は、サムズクラブの年会費が安いこと。コストコは一般会員(ゴールドスター)が60ドル、上級会員(エグゼクティブ)が120ドルですが、サムズクラブは一般会員が50ドル、上級のプラス会員は110ドルで、それぞれ10ドル安い設定です。

 ちなみに、コストコの年会費は2000年9月時点で45ドルでしたが、06年5月に50ドル、11年11月に55ドル、17年6月に60ドルと、5~6年ごとに5ドルずつ値上げされています。この周期性から考えると、23年中に値上げされる可能性があります。仮に65ドルになれば、サムズクラブとの差は15ドルに拡大。サムズクラブのお得感が一層増すことになります。

 サムズクラブの優位点の3つ目は、ネットスーパーを利用する際に便利なカーブサイド・ピックアップ(店舗受け取り)に熱心なことです。一方、コストコはカーブサイド・ピックアップに熱心ではなく、同サービス開始から2年たった現在でも数店舗で実験しているだけ。サムズクラブのように全面展開という状況ではありません。

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