一方でアマゾンは11月初め、カーニバルのような演出が特徴だった移動販売サービス「トレジャートラック(Treasure Truck)」を終了すると発表しています。トレジャートラックは数量限定のセール商品を利用者に直接届ける(販売する)という「移動式のピックアップ拠点」というべきものです。

アマゾンが展開する移動販売サービス「トレジャートラック」のカラフルなトラック。11月初めにサービス終了が発表された(写真:後藤文俊)
アマゾンが展開する移動販売サービス「トレジャートラック」のカラフルなトラック。11月初めにサービス終了が発表された(写真:後藤文俊)

 具体的には、スマートフォンで「テキスト通知」を申し込んでおくと、1日に1品のセール品(通常価格から30~50%引き)を載せたトレジャートラックが利用者の近所にやって来る時間(例えば、午前9~10時)と、商品をピックアップできる場所などの通知が届きます。これを確認してアマゾンアプリ経由で商品を注文すると、トレジャートラックで注文品を受け取れるという仕組みでした。もっと具体的に言うと、アプリ決済後に送信される「レシート用QRコード」をトレジャートラックのスタッフに提示。商品と引き換えるのです。ちなみに指定した時間内に受け取りに来なければ、購入は自動的にキャンセルされます。

 シアトルから始まった、このトレジャートラックは、19年の最盛期にはバンを含めて100台以上が稼働。ニューヨークやロサンゼルス、ヒューストンなど約30都市で家電製品や玩具、ステーキやシーフード、ミールキットなどの生鮮食品までを販売していました。南カリフォルニアでも人気が高く、何台ものトレジャートラックが稼働。ホールフーズ・マーケットの駐車場など、ピックアップ場所は10カ所以上もありました。

 セール品の販売だけでなく、映画のプロモーションや新商品のサンプル配布、製品のデモンストレーションといったイベントの拠点にもなっていました。アマゾンによると、トレジャートラックの登録アカウントは数百万にもなり、通知を受け取ってから15分以内にチェックする人が75%という人気のサービスでした。利用者が特に多いのはシアトル、ロサンゼルス、フェニックスで、最も人気だったのはバレンタインデー向けの花束とチョコレートのセット、ソニーのテレビ、そしてスマートノートブックとのことです。

 こうした商品を、スタッフがシャボン玉を飛ばしたり、トラックに載せたデジタルディスプレーの映像と音でカーニバルのような雰囲気で演出したりしていました。さらに買い物客を相手にゲームなどを仕掛けて盛り上げていたのですが、人気はあっても採算面では厳しかったはず。利益率が高いクラウドサービス「AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)」出身のジャシー氏からすれば、こんなサービスは「謎」そのもの。「即刻、アウト!」と思ったことでしょう。

アマゾンフレッシュ・トーレンス店の店舗外観。多くのアマゾンフレッシュを視察しているが、いつも閑散としている(写真:後藤文俊)
アマゾンフレッシュ・トーレンス店の店舗外観。多くのアマゾンフレッシュを視察しているが、いつも閑散としている(写真:後藤文俊)

 一方で、継続させるか否か、判断を迷いそうなのがアマゾンフレッシュです。通算44店舗目であるアマゾンフレッシュ・パサデナ店が9月15日にオープンして以降、2カ月以上、新規出店がありません。筆者は新店を含めて多くのアマゾンフレッシュを視察していますが、いつも閑散としている店内に驚きます。例えば週末土曜日の午後といえば、食品スーパーにとって最も忙しい時間帯のはずですが、アマゾンフレッシュの店舗はいつもガラガラ。客数が明らかに少ないのです。

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