また、10月に入り、アマゾンは自律走行の配送用ロボット「アマゾンスカウト(Amazon Scout)」による宅配サービスのテスト中止も発表しています。アマゾンのスポークスパーソンが大手メディアに語ったところによると、「ラスト・ワン・マイルのロボット宅配(実験)が顧客ニーズに合致していなかった」ことを理由に挙げています。

 6つの車輪がついたアマゾンスカウトは高さ約40センチメートル、横幅が約30センチメートルで、小型のクーラーボックス程度の大きさです。人が歩行するのと同程度のスピードで動き、人やペット、そのほかの障害物などを避けながら歩道を走行します。

アマゾンが開発した自律走行の配送用ロボット「アマゾンスカウト」。宅配サービスのテスト中だったが、10月に入り中止が発表された(写真:アマゾン)
アマゾンが開発した自律走行の配送用ロボット「アマゾンスカウト」。宅配サービスのテスト中だったが、10月に入り中止が発表された(写真:アマゾン)

 月曜から金曜の日中に実施していたテストでは、当初アマゾンのスタッフが「スカウト大使(Amazon Scout Ambassador)」と称して、ロボットをフォローしていました。自律走行ロボットを使った配達の場合、アプリで「荷物が到着した」という通知を受けた購入者が、自宅前の歩道に出て、注文品を受け取る必要があるからです。購入者がロボットに近づくと上部のカバーが自動で開き、注文品を取り出すとカバーが閉まる。こうした“複雑な”仕掛けのため、当初はスカウト大使が荷物の取り出しなどをヘルプしていたのです。

 テストは19年1月、シアトルから北東へ60マイルほど(約100キロメートル)のスノホミッシュ郡の住宅街で開始。6台のアマゾンスカウトを使い、プライム会員向けに当日、もしくは1~2日後に配達するサービスを展開していました。19年8月にはカリフォルニア州アーバイン地区にも拡大。新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化していた20年秋ごろには、サービス地域をジョージア州アトランタ地区とテネシー州フランクリン地区に拡大しました。

 こうした状況から急転直下のテスト中止です。ロボット宅配から完全撤退することは否定しているものの、同様のテストを続けるスタートアップや大手チェーンストアとは、大きなギャップができることは間違いありません。もし今後、アマゾンスカウトをハードオフなどの中古品買い取り店で見かけたら……、私なら記念品として「即買い」しますね。

 さて、こうしたラスト・ワン・マイル関連で、今のところリストラ対象になっていないのは、ドローン配送のプライムエア(Prime Air)くらいです。22年6月にはドローン配送テストをカリフォルニア州ロックフォード地区で実施すると発表。テキサス州カレッジステーション地区でも実証実験を開始する予定です。

 また11月10日には軽量化された新型ドローン「MK30」がお披露目されました。現行機種「MK27-2」から、より小型・軽量になって航続距離が伸び、温度に対する耐性も上げたとのことです。

アマゾンが11月10日にお披露目した新型ドローン「MK30」。現行機種「MK27-2」と同じく6つの回転翼を持ち、プロペラのデザインを一新したことで騒音を25%も低減(写真:アマゾン)
アマゾンが11月10日にお披露目した新型ドローン「MK30」。現行機種「MK27-2」と同じく6つの回転翼を持ち、プロペラのデザインを一新したことで騒音を25%も低減(写真:アマゾン)

 安全性を重視しつつ、小雨でも飛行できるようにしたのです。MK30は現行機種と同じく6つの回転翼を持ちますが、プロペラを新たにデザインしたことで、人が知覚する騒音を25%低減できるとのこと。実際のテスト飛行は1年以上も先ですが、この新型ドローンは騒音問題だけでなく、ドローン事業の“解体問題”も解決できるかもしれません。なにしろプライムエアは創業者ジェフ・ベゾス氏の「夢」ですから。さすがのジェシー氏でも、ちり紙のように“ポイ捨て”はできないでしょう。