
2022年11月17日、米アマゾン・ドット・コムは23年までの人員削減計画を正式に発表しました。各種報道では、「解雇する人数は延べ1万人になる」とされています。現時点で詳細は確定していませんが、創業以来初と言うべき「歴史的な大規模レイオフ」になることは間違いなさそうです。
アマゾンの最高経営責任者(CEO)であるアンディ・ジャシー氏がブログで発表した内容を見ると、まずデバイスおよび書籍事業全体で、多くのポジションが廃止されるようです。また、人材・経験・技術(People Experience and Technology)チームには「自主的な人員削減を実施するよう」伝えているもようです。
さらに「人員削減は私たちのストア(Our Stores)にも及ぶ」と記されていることから、アマゾン傘下の高級スーパー「ホールフーズ・マーケット」やレジなしコンビニエンスストア「アマゾンゴー(Amazon Go)」、アマゾンが開発した食品スーパー「アマゾンフレッシュ(Amazon Fresh)」、そしてアマゾン初となるアパレルショップ「アマゾンスタイル(Amazon Style)」にも、何らかの影響が及ぶ可能性があります。
ジャシー氏の姿を見ると私は、失礼ながら「帽子をかぶり、前掛けをした八百屋さん」を、つい思い浮かべてしまいます。しかしそんな素朴なイメージとは裏腹に、彼はCEO就任以来、店舗と事業のスクラップ(廃止)をえげつないほど断行しています。
22年3月にはリアル店舗の「アマゾンブックス(Amazon Books)」、「アマゾン4スター(Amazon 4-Star)」、そして「アマゾンポップアップ(Amazon Pop-up)」の全店をスクラップすると発表。実際、英ロンドンで21年末にオープンしたばかりの4スターの2店舗を含め、22年4月末までに合計68店を閉鎖しました。

22年5月にはアマゾン傘下で約530店を展開していたホールフーズ・マーケット6店舗を閉鎖すると発表。アマゾンはホールフーズを5年前に買収しましたが、米国4州にある6店舗を一斉に閉鎖するのは、前例のない事態です。閉鎖された店舗の中には、16年9月にイリノイ州イングルウッド地区にオープンオープンしたホールフーズ・マーケット・イングルウッド店が含まれています。米外食チェーンのチポトレ・メキシカン・グリルや米スターバックスなども出店するネイバーフッド型ショッピングセンター「イングルウッド・スクエア(Englewood Square)SC」内に500坪の広さでオープンした同店は、犯罪が多発するフードデザート(食の砂漠)地区に出店したことで全米から注目された“有名な店”なのです。
地域の雇用を促進するためシカゴ市が2000万ドルを投じたプロジェクトの一環として、イングルウッド店では地元から約100人が雇用されました。イングルウッド地区は住民の98%を黒人が占める地域。そこから85人を採用したのですが、多くは前科がある人たちでした。
そんな経緯があるので、店舗閉鎖が発表されるや、シカゴ市長のロリ・ライトフッド氏は、「大変残念であり、地域社会にとって大きな打撃である」と発信。アマゾンは店舗閉鎖の理由を明かしていませんが、同店が不採算店であることは示唆しています。
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