過去の成功パターン、否定できるか

 そこで客数を増やそうと、20%オフクーポンを使った販促などを実施したのですが、ブランドイメージの毀損につながり、利益が回復するどころか、底なし沼のように下落し続けました。

 2012年以降、粗利益率が下げ止まらず、テマレス氏がCEO辞任を発表したときには31.7%になっていました。既存店ベース売上高も2015年3~5月期以降はマイナス成長ばかりでした。

ベッド・バス&ビヨンドの既存店ベース売上高の成長率と粗利益率の推移
ベッド・バス&ビヨンドの既存店ベース売上高の成長率と粗利益率の推移
[画像のクリックで拡大表示]

 そして2019年5月、テマレス氏は辞任しました。「物を言う株主に追い出された」と言っていいかもしれません。

 繰り返しになりますが、テマレス氏はベッド・バス&ビヨンドを優良企業に育てた、優れた経営者です。しかし彼の強烈な成功体験が会社の変革を遅らせてしまったのです。

 Eコマースに乗り出すのが遅れ、DX(デジタルトランスフォーメーション)で重要なストアアプリはローンチできず、辞任直前に発表された再建策は、古い考え方に根差した改革とは呼べないようなものでした。

 現在は後任のCEOが店舗のリストラを断行しています。傘下のワン・キングス・レーンやクリスマス・ツリー・ショップを売却し、260店舗近くあったコスト・プラス・ワールド・マーケットも売却。合計1500以上あった店舗は、直近で999店まで減っています(本体のベッド・バス&ビヨンドが813店、バイ・バイ・ベイビーが132店、ハーマン・フェース・バリューが54店)。

 ベッド・バス&ビヨンドは今後2年間でさらに約200店舗の閉鎖を予定しています。わずか数年で1500店から800店ほどに店舗数が半減するわけです。

 これはチェーンストア理論に基づいて会社を成長させたテマレス氏には絶対できなかったことでしょう。

 彼は1958年生まれで、くしくもドリカムの中村正人さんとは同い年。もちろん中村さんは、店舗や売り場に執着して会社を追い出されたテマレス氏と、同じ運命はたどらないでしょう。しかし、過去の成功パターンを否定して、「せ~の!」で変化をしないと、この先が不透明になる可能性はあります。

 ドリカムはファンのことを「ベイビーズ」と呼んでいるようです。「CDを買ってください」と呼びかける「バイ・バイ・ベイビーズ(Buy Buy Babys)」と言っているうちは良いのですが、それがドリカム離れにつながって、「さようならベイビーズ」(Bye Bye Babys)となる日が来ないことを祈っています……。

P.S.

 ところで……。

 雑貨店「無印良品」を運営する良品計画の米子会社「ムジUSA(MUJI U.S.A.)」(2006年に米国事業へ進出)は2020年7月、連邦破産法11条を申請し、店数を大幅に縮小しています。

 2012年に米国へ進出したニトリUSA(Nitori USA,Inc.)の「アキホーム(Aki-Home)」も低迷が続き、ピーク時は6店舗でしたが現在は2店舗のみです。

 日本では「ユニクロ」のファーストリテイリングが上場以来高値をつけて話題になっていましたが、米国ではまだ利益が出ていません。

 ベッド・バス&ビヨンドに限らず、過去の成功体験やビジネスモデルにしがみついていては、変化の激しいカスタマーファーストの国、米国では受け入れられないのです。

(写真:後藤文俊)

この記事はシリーズ「後藤文俊のシン・店舗 in USA」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。