実際、買収発表前の10月13日に米上院のバーニー・サンダース議員は、「強欲な企業による合併が物価高を招き、(米国経済は)最悪の状態になるだろう」などと指摘。「バイデン政権は合併を阻止すべきだ」とツイートしました。当時、クローガーによるアルバートソンズ買収の噂についてロイター通信が報道しており、それを知ったサンダース氏が、ツイートによるけん制を狙った格好です。

さらに、オフィス用品第1位の米ステープルズと第2位のオフィスデポの合併を1996年と2015年の2回、白紙撤回させた実績がある米連邦取引委員会(Federal Trade Commission、FTC)も、「この買収は公正な競争を妨害しかねない」などとして、差し止め訴訟を起こすことも容易に想像できます。
節約を求める人たちがウォルマートに来店
現在米国では、40年ぶりとなる猛烈な物価高が進行中です。米労働省が10月13日に発表した9月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月より8.2%も上昇。市場予想の8.1%上昇を上回りました。
CPIの伸び率自体は、3カ月連続で下がっていますが、なお高水準を維持。米国の激しいインフレは収まる気配がありません。例えば9月の「家での食費(food-at-home)」は前年同月から13%上昇。スーパーマーケットなどの販売価格が9カ月連続して年率2桁の伸びとなっていることなどが影響しています。これを受けてジャネット・イエレン米財務長官は10月13日、「(インフレの抑制に向けて)まだやるべきことがある」との見解を示しました。
今回の大型買収が発表される前のことですが、ジョー・バイデン政権幹部も「インフレ抑制に向けた措置を取ることを確約する」などと述べています。支持率が低迷する中、中間選挙を控えるバイデン政権にとって、インフレ対応は最優先事項。特に物価高に拍車をかけるかもしれない大型買収は“目障り”以外のなにものでもありません。各種報道によると「11月に、米上院で合併問題を精査する公聴会が開かれることが決定している」とのことです。
筆者も、今回の買収は白紙撤回されるだろうと予想しています。
ところでウォルマートのCEO(最高経営責任者)であるダグ・マクミラン氏は、直近の決算発表時に出した声明で、「米国内の食品や消耗品などの分野では、中・高所得層を含めて節約を求める人たちがウォルマートに来店した」と説明しました。
同社CFO(最高財務責任者)のジョン・レイニー氏も、あるインタビューで、「中所得者や高所得層の増加が目立っている」と指摘。「食品や市場シェアの増加分のうち、約4分の3が世帯年収10万ドル以上の人たちによるものだった」としています。
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