そして、結論は次のようなものでした。

 「アキホームは競合店に対して、どう差別化するのか、見えにくい。米国人も日本製品は好きだが、『アフォーダブル(手ごろな)・プライス』で、競合店より集客できるとは思えない。一方で低価格を武器にすると、客層が悪くなる。返品も予想以上に増える。日本人の多くは米国人の返品を甘く見積もっている。『誰が顧客になるのか』を考えても、ニッチな層しか思い浮かばない」

著名経営者が「ワンマン」になってしまう理由

 こう書いた後も、視察だけでなくプライベートでも何回か訪問しましたが、店舗のフォーマットなどが全く変化しないため、次第に足が遠きました(店名の表記を変えるなどの“小手先の改革”は色々とやっていましたが)。

毎年、数百人ほどの社員を渡米させ、米国小売りチェーンの実態を熱心に勉強させているイメージがあったのだが(写真:後藤文俊)
毎年、数百人ほどの社員を渡米させ、米国小売りチェーンの実態を熱心に勉強させているイメージがあったのだが(写真:後藤文俊)

 ニトリは毎年、少なくない数の社員を渡米させており、米国小売りチェーンの実態を熱心に研究しているイメージがありました。しかし、そうした研究を経て進出したはずのアキホームの実態を見ると、「彼らは一体米国で何を見て、何を学んだのだろう」という素朴な疑問が湧いてきます。

 日本の新聞や雑誌、ネットでは、似鳥氏を名経営者であるとする記事が少なくありません。しかし、少なくとも今回の米国撤退という事実を踏まえると、似鳥氏を褒めそやしていた人たちは、「米国のアキホームを見たことがないのだろう」、「米国流通の実態に詳しくないのだろう」と思ってしまいます。

 確かに、日本から米国に進出してくる企業の多くは、「日本では大成功している」のでしょう。だから、そのトップは日本のメディアに「カリスマ」「名経営者」などと評価され、「米国市場でも成功できるだろう」と考えてしまう。

 米国と違い、日本のメディアが著名な経営者にインタビューする際には、相手の弱点や改善すべき点を突くことより、その企業の良いところを中心に話を展開することが多い気がします。相手を持ち上げて、より多くの話を引き出そうとする。

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この記事はシリーズ「後藤文俊のシン・店舗 in USA」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。