
米国の外食業界では、慢性的な人手不足を補うために、作業を自動化したりロボットによるオペレーションを導入したりする企業が増えています。業界の巨人である米マクドナルドを筆頭に、米タコベルや米ポパイズ、そして米パネラブレッドなどが、AI(人工知能)を使ったドライブスルーを試験的に導入しています。
一方、AI搭載の音声ボットを使ったドライブスルーを「全店に展開する」と発表済みの会社もあります。ハンバーガーチェーンのカールスジュニアやハーディーズなどを44州で合計3800店展開する米CKEレストラン・ホールディングス(HD)です。同社は2023年5月4日、AI開発スタートアップと提携しドライブスルーに音声ボットを導入すると発表。音声ボットを提供するのは、米プレスト(Presto)、米オープン・シティ(OpenCity)、そして米ヴァリアントAI(Valyant AI)の3社です。
「マクドナルド・ロボットとの戦い」が勃発
プレストは生成AIであるChatGPT(チャットGPT)を開発した米オープンAI(OpenAI)との提携を3月に発表しており、オープンAIのCEO(最高経営責任者)であるサム・アルトマン氏はプレストに投資もしています。CKEレストランHDによると「AIを使ったドライブスルーの導入で、以前よりスピーディーかつ簡単に、そしてより正確に注文が受けられるようになる」とのこと。
「ハンバーガーと一緒にポテトもいかがですか?」とか「ドリンク、ポテトのセットの方がお得ですがいかがでしょう?」といった「アップセル」により客単価アップも狙えるでしょう。なおアップセルとは、より高い商品を購入してもらうことで、他の商品と併せて購入してもらうことはクロスセルと言います。AIを利用すれば、(人間とは違って)これらの施策を“うっかり忘れることなく”実施できるでしょう。
さて、マクドナルドは21年夏にシカゴ市内の10店舗でAI技術を活用したドライブスルーを試験導入し、一定の成果を上げています。AI音声認識ソフトで注文を受けた際は「85%の精度で認識できた」とのこと。一方で5回に1回はスタッフが補助する必要があったそうです。
つまり、何の問題もなくスムーズに注文できた客がいた一方で、しゃべったことを正しく理解してもらえないなどのトラブルが多発。そのため、AIのポンコツぶりを笑い話にした動画や、“放送禁止”になるような怒りの言葉だらけの動画がSNS(交流サイト)に多数アップされています。
例えば22年11月にTikTokにアップされた「マクドナルド・ロボットとの戦い(Fighting with McDonald's robot)」という動画では、投稿者の「@themaddivlog」さんがマクドナルドのAIドライブスルーで水とバニラアイスクリームを注文したのに、注文の確認画面では「バター2個とケチャップ4個」と表示される様子が映っています。
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