そんなフリスコ市で、市民から行政へ最も多く寄せられるクレームは交通渋滞でした。ドローン宅配を実現することで交通渋滞による配達遅延や宅配トラックそのものの減少が期待されています。もう1つの宅配対象であるリトルエルム地区は、フリスコ市から西に6マイル(約10キロメートル)ほどで、人口は約5万人です。

 この2地域はともに人口密度が高く、ドローンが飛ぶのは、高さや形状が様々なビルが林立する「複雑な空域の都市部」。そこで、リトルエルム地区ではドローン宅配の対象をウォルグリーン店舗から4マイル圏内に限定。フリスコ市では、ドローンのネスト(出発基地)である「フリスコ・ステーション(Frisco Station)」から4マイル圏内が宅配の対象となっています。

到着までの最短記録は2分47秒

 こうした制限付きで始まったドローン宅配ですが、利用するのはとても簡単。ドローン宅配専用アプリを開いて、欲しい商品を選んで注文・決済するだけ。アプリには到着予定時間も表示されます。

注文が入ると、店舗スタッフが商品を専用パッケージに格納。ドローンから伸びるケーブルのフックに引っ掛ける(写真:Wing)
注文が入ると、店舗スタッフが商品を専用パッケージに格納。ドローンから伸びるケーブルのフックに引っ掛ける(写真:Wing)

 顧客から注文が入ると、ドローンが店舗の屋上から飛び上がり、23フィート(約7メートル)の高さでホバリング。やがてドローンからフックの付いたケーブルが降りてくるので、店舗スタッフが商品を入れた専用パッケージをフックに引っ掛けます。ドローンはそれを感知して自動的にケーブルを巻き上げ、商品を機体下部に、ぶら下げる形で“収納”。そして150フィート(45メートル)上空まで上昇し、時速65マイル(時速100キロメートル)で飛行し、注文者の自宅に商品を届けるのです。

 ドローンが注文者宅に近づくと、注文者のスマホアプリにドローンの現在位置を示す地図と、カウントダウンの形で到着予定時間が表示されます。そしてドローンが注文者宅に到着すると、バックヤード(裏庭)もしくはフロントパスウェイ(ガレージ前の通路)の上空でホバリングしながらケーブルを地面まで降ろし、自動的にフックを外して商品を届ける、という仕組みです。

注文された商品をぶら下げながら、注文者宅へ輸送するドローン(写真:Wing)
注文された商品をぶら下げながら、注文者宅へ輸送するドローン(写真:Wing)

 21年12月のテストフライトでは、想定の半分である5分ほどでミネラルウオーターを届けることに成功。ウイングによると、決済から注文品到着までの最短記録はたった2分47秒だったとのことです。

次ページ ドローンの利点を理解してもらう