ウォルマートは2017年12月、登記上の社名をウォルマート・ストアーズからウォルマートに変更すると発表。ビジネスの中心を店舗事業以外に拡大すると“宣言”(写真:後藤文俊)
ウォルマートは2017年12月、登記上の社名をウォルマート・ストアーズからウォルマートに変更すると発表。ビジネスの中心を店舗事業以外に拡大すると“宣言”(写真:後藤文俊)

 米アップルコンピュータを創業したスティーブ・ジョブズ氏が、社名から「コンピュータ」という文字を外し、アップルに変更する方針を発表したのは、2007年のこと。事業の中核がコンピューター市場からモバイルなど、より広い製品市場へシフトしたことを踏まえてのことでした。

 それから10年後の17年12月に、やはり社名を変える決断を発表したのが米ウォルマートです。その後、登記上の社名をウォルマート・ストアーズ(Wal-Mart Stores Inc.)からウォルマート(Walmart Inc.)に変更し(18年2月)、ビジネスの中心を店舗事業以外に拡大することを明確にしたのです。

Eコマース売上高が17%も増加

 実際、ウォルマートは店舗という“場所”に縛られない事業をスケール(拡大)。23年2月21日に発表した22年第4四半期(22年11月~23年1月期)決算では、「我々はオムニチャネルリテーラーになった(We have become an omnichannel retailer)」と高らかに宣言しています(オムニチャネル=実店舗とネット通販の統合)。

 同決算では食品やプライベートブランド(PB)商品などが業績をけん引。総売上高が前年同期比7.3%増となる1640億5000万ドル、純利益は62.8億ドルと、前年同期の35.6億ドルから76.2%という大幅な増益を記録。売り上げ全体の7割近くを占める国内のスーパーセンターやディスカウントストアなど、国内事業であるウォルマートUS事業部の売上高も1137億ドルとなり、前年同期比8.0%増となりました。

 ウォルマートUSの既存店・売上高前年同期比は8.3%増(ガソリン販売は除外)。競合店より安い価格を提示した食品などがけん引しました。これにより14年8~10月期から34四半期連続で前年を上回ったのです。内訳は、客数を示すトランザクション(取引件数)が富裕層の新規客が増加したことなどが寄与して1.8%増に。客単価は6.3%増でした。

 ウォルマートによると22年12月の既存店ベースは食品販売が好調で、同社にとって記録的な数字になりました。また、ネットスーパーを含めたEコマース(電子商取引)売上高は、前年同期から17%も増加。ネット注文でも店舗からの宅配や、注文した商品を店舗で受け取るカーブサイド・ピックアップなど、店舗の在庫による売上高は過去2年で3倍という伸びで、1カ月間の売上高は10億ドル以上だったと明かしています。