「自分たちが親世代より豊かに暮らせる可能性は低い」。今、そう考えている若い人たちは少なくありません。しかし、日ごろから経済活動の現場に触れて会社を見る目を磨き、働きながら投資を行うことで、「普通の人」が相当の資産を持つことは十分に可能だとビジネスコンサルタントの山崎将志氏は言います。
 投資で稼ぐ力を養うには、身近なビジネスに目を向けることも必要と山崎氏は言いますが、具体的には? 『父さんが子供たちに7時間で教える株とお金儲けの教養。』(日本経済新聞出版)より抜粋、内容を編集してお届けします。

あの株を買っておけば……身近な「タラ・レバ銘柄」

 株式市場が活況である。20年の3月末に買っておけば、いや安倍政権が始まったときに仕込んでおけば、いやもっと遡って小泉政権時代に日経平均が7608円を付けた頃からコツコツ買っておけば、とほぞを噛(か)んでいる人も少なくないだろう。あのときにああしたら、こうしていれば……。かように株式投資にはタラ・レバの悩みが付きものである。

 私にも「あのとき買っていたら……」という「タラ・レバ銘柄」は、いやになるほどある。その中でも、ニトリホールディングス(以下、ニトリ)と、カツ丼チェーン「かつや」を運営するアークランドサービスホールディングス(以下、ASH)の成長を見るにつけ、自分の先見の明のなさに頭を抱えたくなる。

 ニトリの株価は現在(本稿執筆時点)2万円前後であるが、10年前は3000円前後だった。10年間でおよそ7倍の伸びである。今やニトリは全国津々浦々で展開しているし、メディアでもしょっちゅう特集が組まれるなど、株式市場にも我々庶民にも人気企業だ。

 10年前から既にニトリの店はたくさんあって注目もされていた。この10年で店舗をさらに増やし、商品の新陳代謝を進めて、ラインアップを拡大した。その結果、来店客が多くなり、1人当たりの購入点数が増え客単価も上がった。そして利益が増えた。何しろ34年連続増収増益だ。もちろん株価は上がった。

「カツ丼500円の店が儲かるわけがない」という残念な予想

 もう1社、「かつや」を運営しているASHを見てみよう。現在、同社の株は2300円前後で取引されている。上場したのは2007年8月30日で、売り出し価格は20万円だった。その後株式分割が行われ、10年前の調整後株価である170円と比べると、何とおよそ14倍に伸びている。

 かつやは私が好きな飲食店の一つで、自宅の近所にあるため昔からよく行っていた。あるときを境にゴルフ場への行き帰りに通る幹線道路沿いにぽつぽつ出来始めて、店を増やしているな、と感じていた。しばらくすると上場のニュースが出た。しかし私は株を買わなかった。

 理由は単純だ。かつやで食べるのは好きだが、カツ丼1杯およそ500円(税抜き)の会社がそんなに儲(もう)かるとは思えなかったからだ。食事後に会計すると必ず100円引き(税込み)の券をもらえるため、リピートすれば400円(税抜き)がカツ丼1杯の実質価格だ。割引券を使えば、牛丼チェーンと値段はそう変わらない。牛丼を作るより、どう考えてもカツ丼のほうが手間がかかるし、来店客の滞在時間もかつやのほうが長い。だから利益率は牛丼チェーン以下のはずで、そんなに儲からないし、店も増やせないだろう、というのが私の印象だった。 

 上場当初は他の投資家も懐疑的だったようだ。新規上場時の売り出し価格は20万円だったが、初値はそれ以下の19万円だった。公開時の時価総額は50億円と、特に期待できる要素はないと思った。

「カツ丼500円のお店なんて儲からない」は、残念な見立てだった(写真:gontabunta/Shutterstock.com)
「カツ丼500円のお店なんて儲からない」は、残念な見立てだった(写真:gontabunta/Shutterstock.com)

 ところが同社は、残念な私の予測に反して地道に店を増やし、アップセルや高価格商品の追加により客単価も上げてコツコツ成長していった。結果、過去10年で株価は14倍になったのだ。

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この記事はシリーズ「残念な一生を送らないための株とお金儲けの教養。」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。