「おしりだって洗うもの」という“常識”を日本人に浸透させた温水洗浄便座。その立役者が、「ウォシュレット」でおなじみのTOTOだ。1980年に自社開発した温水洗浄便座を市場投入し、次々と改良を重ねて国内のみならず世界でも最大手の地位を築いた。今も「トイレは快適で心地よい」という新しい文化を世界各地に広めようと突き進んでいる。(文中敬称略)

歴代の「ウォシュレット」が並ぶ北九州市のTOTOミュージアム
歴代の「ウォシュレット」が並ぶ北九州市のTOTOミュージアム

 「せっかく売るなら、ちゃんと必要な工事もできるような仕組みを考えていただきたい」

 2018年8月、米国ワシントン州シアトルのアマゾン・ドット・コム本社で、住宅設備を担当する地区マネジャーらを説得している日本人がいた。当時のTOTO社長、喜多村円(現会長)だ。

 米国でもウォシュレットはアマゾンなどを通じて売れ続ける商品になっている。米国は自分で住宅を建てたりリフォームしたりする「DIY」が盛んな国である。だが、温水洗浄便座は電気を使う必要がある。水回りだけに当然、漏電や感電のリスクがないわけではない。

 「そもそも、米国だけでなく海外のトイレには電源がないことがほとんどです。コンセントがないとウォシュレットは使えません。だから、電源の工事なども含めたパッケージで売ることができないかと提案したわけです」。喜多村の渡米に同行したTOTO取締役専務執行役員の林良祐はこう解説する。林は米国駐在経験もあり、高機能な温水洗浄機能がある一体形便器「ネオレスト」の開発リーダーや、ウォシュレット生産本部長などを務めた経歴を持つ。

高機能トイレ開発に長年携わり、ウォシュレット生産本部長を務めた林良祐TOTO取締役専務執行役員
高機能トイレ開発に長年携わり、ウォシュレット生産本部長を務めた林良祐TOTO取締役専務執行役員

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