日本と違う習慣・文化に寄り添う

 「禁酒を守るイスラム教徒が多いので『二日酔いのときにどうぞ』とは言えないし、普段はシャワーを浴びるだけなので『お風呂上がりに飲んで』とも言えない土地。しかし、ラマダン明けなどには甘いシロップと水を大量に飲んでいることが分かったのです」

 2000年からアメルタインダ大塚の社長として現地に赴任している板東義弘は、あるセミナーでこう話している。「長い目でみてポカリスエットを育てる必要がある」と考えた板東は、インドネシアではまったく無名の飲み物を浸透させるために「文化や風土に根差した売り方を考えるべきだ」と決意した。

インドネシアの学校で生徒にポカリスエットを説明する現地の販促員
インドネシアの学校で生徒にポカリスエットを説明する現地の販促員

 中学校などに現地の販促員が出向き、水分や電解質(イオン)が失われるシーンでは、ポカリスエットのような飲み物が適していると説明。学校で教師や生徒たちを相手にした説明会はインドネシア全土で数千回に及んだ年もあったという。

 また、ラマダン向けのキャンペーンも展開した。ラマダン時期限定のテレビCMを制作して放送し、モスクの周辺では礼拝帰りの人々にサンプルを無料で配布した。

デング熱の大流行で浸透進む

 2004年、インドネシアで蚊を媒介としたデング熱の大規模流行があった。世界保健機関(WHO)が発表した状況報告では、1万4000人以上が感染し、約260人が死亡したとされる。

 インドネシア各地で徐々に認知度を高めていたポカリスエットは、この04年を境に急速に普及していった。大塚製薬はちょうどその年、大型のポカリスエット工場となるスカブミ工場(西ジャワ州)が完成し、稼働を始めている。これが同国での急激な需要の拡大を支えた。

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