発汗で失われる水分と電解質(イオン)を素早く補給できる、それまでにない新しい機能性飲料として1980年に登場した「ポカリスエット」。スポーツや病気で汗をかいたときだけでなく、当時まだ聞き慣れなかった「熱中症」の対策をアピールすることで、急速に知名度と販売を伸ばした。それは日本にとどまらず、インドネシアやアラブ諸国など1年中暑い熱帯地域にも波及していった。(文中敬称略)

人口が約2億7000万人と日本の2倍以上あるインドネシア。年間の平均気温はセ氏26~30度、平均湿度は80%前後と蒸し暑い。イスラム教徒が人口の約87%を占め、日中は飲食ができない「ラマダン(断食月)」がある。2021年のラマダンは4月半ばから5月半ば。10月ごろの猛暑期ほどではないものの、日中はそうとう暑い。
水分・電解質補給の重要性、海外でも
ラマダンの期間中、汗とともに失われた水分や電解質を、日没後、食事のできる時間に補う飲料として定着しているのが、大塚製薬が1989年から現地で販売している「ポカリスエット」だ。販売されている20以上の国・地域の中でも、インドネシアでの販売量は突出している。
日本で80年に発売した当初は「味が薄い」と不評もあったポカリスエット。大塚製薬の社員がローラー作戦で、スポーツ会場や銭湯、サウナなど「汗をかく場所」を回って商品の特徴を説明し、熱中症対策を認知させる取り組みを進めてきた。初年度に配布したサンプルは3000万本にのぼった。「まずは汗をかいたら飲んでもらう」ことで認知度を高め、82年からは爆発的に売り上げを伸ばした。
同じ82年には香港や台湾からポカリスエットの海外市場進出を始め、特にインドネシアでは現地文化に溶け込ませる形で、丁寧に啓発活動を実施してきた。
インドネシアで本格的に、ポカリスエット専門の販売促進員を現地採用して売り込みをかけたのは、アジア通貨危機のあった97年。現地企業と合弁を組んで「カパルインダー大塚」(99年から「アメルタインダ大塚」)を設立、ポカリスエットの販売に乗り出した。
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