また、2021年3月にはベンチャー企業を対象に新しい地域振興のビジネスアイデアを募る「Pitch & Match(ピッチ・アンド・マッチ)」を開催しました。鹿島アントラーズが受賞者に対してアクセラレーションの機会を提供するピッチコンテスト型のプログラムで、71社からの応募がありました。

鹿島アントラーズが2021年3月5日に開催した地域振興のビジネスアイデアを募る「Pitch & Match(ピッチ・アンド・マッチ)」。71件の応募が集まった
鹿島アントラーズが2021年3月5日に開催した地域振興のビジネスアイデアを募る「Pitch & Match(ピッチ・アンド・マッチ)」。71件の応募が集まった

 鹿島アントラーズ、および鹿嶋市とともに共同で実現したい事業についてビジネスアイデアを競っていただきました。地域課題を自分たちだけで解決しようとせずに、課題をオープンにし、ソリューションを募ることで、多くの外部の協力者を巻き込みながら街づくりしていくことが重要だと考えています。

街の課題を解決するための「ハブ」としての存在

 街の魅力が落ちるということは我々にとって競争力が落ちることに直結します。鹿島アントラーズは街のハブになっている存在ですし、メルカリが経営権を譲り受けたことで東京のテック企業ともアクセスできるようになりました。

 例えば、スマートシティーについての議論は人口の多い政令指定都市などが主導していますが、街にテクノロジーを入れていこうとすると調整が非常に大変です。逆に、鹿嶋市は7万人弱の人口で、ホームタウン5市合計でも30万人弱と決して大きくありません。

 このくらいの小さい都市のほうが関係者が近く様々な実証実験をしやすいともいえます。自動運転しかり、ドローン配送しかり。いきなり人口の多い都市では難しい実証実験が鹿嶋市ではしやすいと考え、地方を逆手に取った戦略もあると考えています。

 海外の大手IT企業はいずれもスマートシティーなどリアルの領域にも進出してきていますし、日本でもトヨタ自動車が実験都市として「Woven City」の建設をスタートするなど、今後のイノベーションとしてリアル×テクノロジーが注目されています。リアルでイノベーションが起きるとき、鹿嶋市をアウトプットできる場所にしていきたいと思っています。

 スマートシティー構想が頓挫した事例で有名なのは、グーグルの兄弟会社である米サイドウォーク・ラボがカナダのトロント市で実現しようとしていたプロジェクトです。営利企業が街づくりをしようとすると、一種の気持ち悪さがどうしても生じてしまいます。

 その点、鹿島アントラーズは市民と一緒に街づくりをしやすい立ち位置にいます。次世代移動サービス「MaaS(マース)」を進めるにしても、何かしらの情報を取得されている気持ち悪さが前面に立つことなく、試合開催日の渋滞をなんとか解決したいと住民もファンの皆も願っているわけです。共通の課題を解決するためにテクノロジーを活用していき、結果としてテクノロジーが街になじみ、街が将来に向けて進化していくことをクラブがハブになって進めていければと思っています。

 クラブチームのビジネスを再定義することで、無限に可能性が広がるのです。

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