第2次安倍政権で防衛大臣政務官を務め、今は自民党・外交部会長の職にある佐藤正久・参院議員に防衛産業の課題を聞いた。「日本は今のままでは中国に対抗できません。中国は軍民融合の体制をとっており、国家主導で軍のために民の技術力を利用しています」と憂慮する。さらに、実戦経験の不足が役に立たない装備品を生み出している可能性を指摘する。

(聞き手:森 永輔)

イラクのサマワで活動する陸上自衛隊(2004年)。佐藤議員はここで、自衛隊の装備は実戦を意識していないと感じた(写真:ロイター/アフロ)
イラクのサマワで活動する陸上自衛隊(2004年)。佐藤議員はここで、自衛隊の装備は実戦を意識していないと感じた(写真:ロイター/アフロ)

日本の防衛産業がいま取り組むべき課題は何でしょう。

佐藤正久・参院議員(以下、佐藤):(1)アジア市場での役務の提供に目を向けていないこと、(2)企業の集約を進めること、(3)技術開発に一層力を入れること、を挙げたいと思います。

1960年生まれ。1983年、防衛大学校を卒業し、翌年、陸上自衛隊第4普通科連隊(帯広)に配属。1996年に国連PKOゴラン高原派遣輸送隊初代隊長、2004年にイラク先遣隊長、復興業務支援初代隊長。2007年に参議院議員(全国比例区)に初当選。以降、防衛大臣政務官、外務副大臣を歴任。現在は自民党外交部会長(写真:加藤康、以下同)
1960年生まれ。1983年、防衛大学校を卒業し、翌年、陸上自衛隊第4普通科連隊(帯広)に配属。1996年に国連PKOゴラン高原派遣輸送隊初代隊長、2004年にイラク先遣隊長、復興業務支援初代隊長。2007年に参議院議員(全国比例区)に初当選。以降、防衛大臣政務官、外務副大臣を歴任。現在は自民党外交部会長(写真:加藤康、以下同)

モノだけでなくサービスも防衛装備のうち

アジア市場での役務ですか。

佐藤:役務とは「サービス」のことです。防衛装備の海外移転というと潜水艦をはじめとするモノにばかり目が行きますが、サービスを提供することもできます。日本の防衛産業が持つ強みの1つは装備をメンテナンスする力です。最新鋭の第5世代戦闘機「F-35」の定期整備や改修などを行うリージョナル・デポが日本にあるのはその証しの1つと言えます。

 この強みを生かして、米国製の戦闘機を配備しているアジア諸国に維持・整備のサービスを提供することなどが考えられます。例えばアジア諸国が利用する米国製の第4世代戦闘機「F-15」のエンジンをメンテナンスする。いちいち米国まで運ぶのは大変です。戦闘機のエンジンを整備できる国は、アジアでは、日本の他には韓国とオーストラリアくらいしかありません。防衛産業の新たな収入源になるのはないでしょうか。

 安倍政権が2014年に防衛装備移転三原則(新三要件)を定めました。それまでの武器輸出三原則に代わるもので、移転を認めうる3要件を明確にしました。新三要件を定めた理由の1つに、海外への「役務」の提供を可能にすることがあったのです。新三要件の「運用指針」が、米国からのライセンス生産品*に関わる役務や、米軍への修理の提供などに言及しています。

*:日本は、F-15戦闘機に搭載するターボファンエンジン「F100」に使用する部品をライセンス生産し、ライセンス元に納入している

企業の集約は、昔から課題として挙げられてきました。各企業の売上高に占める防衛事業の比率は小さく、最大手の三菱重工業でさえ10%程度。社内での発言力は小さい。利益率も一般に「3%程度にとどまる」という指摘があります。

佐藤:三菱重工と川崎重工業を集約、もしくは統合しようとすれば、それは難しい。しかし、より小さな規模の集約はできると考えます。

 例えば弾薬です。小銃弾は弾頭、ケース(薬きょう)、帯、雷管から構成されます。そして、それぞれを異なる企業が製造している。もちろん火薬も別の会社です。生産性や堅牢(けんろう)性の面から見て、非常にもったいないのではいでしょうか。各部位を集め組み上げるのにいちいち移動が伴う。サプライチェーンを構成するどこか1社に不具合が生じれば、弾薬の製造が滞ってしまいます。

 なので、弾薬などは1社に集約して生産性を高める取り組みをしてもよいのではないでしょうか。

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