1万円払って6000円未満の給付を受ける仕組み

 例えば「経費や利益を引くと、保険料のうち、給付に回るのは60%未満の見込み」といった説明があると、「1万円で6000円弱の受給権を買うようなもの?」と考えることができます。

 「給付に回るお金が60%未満とはほとんど暴利ではないか?」と感じる向きもあるかもしれません。しかし、現実離れした話ではありません。この例はライフネット生命の開示情報を元に書いているからです。
 同社は、保険料に見込みで含まれる会社の運営費を賄うお金(付加保険料)の割合を例示しています。2021年度の同社のディスクロージャー誌に掲載されている「代表的な契約例における付加保険料」の表によると21%から45%です。

 ただし、付加保険料率21%の契約例から「保険料の79%が給付金に使われる」と見るのは間違いです。同社に限らず、あらかじめ給付額を高めに見込んでおくことで会社側に残るお金もあるからです。
 実際、同社の20年度決算説明資料を確認すると、保険料から各種給付金などを支払い、さらに将来の給付金などの支払いに備えるお金を積み立てた後に残るお金の割合は、19年度で45%、20年度で43%に達しています。

 あくまで単年度の数字なので、加入者の加齢に伴い給付額が増え、会社側に残るお金の割合は減るという見方もできます。しかし、将来の給付のために積み立てるお金には、加入者が高齢化していく傾向も反映されているでしょうから、劇的には変わらないかもしれません。

 いずれにしても「インターネットで保険を販売できるので、経費を抑えられる」とうたっている会社の商品でも「1万円払って6000円未満の給付を受けるような仕組み」とみられそうなのです。
 一定期間の死亡保障がある「定期保険」の場合、大手生保の商品では、実に保険料の70%超が会社の経費や利益になると試算される例もあります。

 08年にライフネット生命が付加保険料を開示して以降、他社が情報を開示しないままなのは、合理性が疑われる料金設定になっているからかもしれません。

 したがって、「保険会社側の取り分」を聞くのは、販売員による人災の防止に加え、保険料の適正化にも役に立つのです。

 なお、仮に販売員との接点がなくなっても、正しく保険と付き合うことは可能です。予想以上に簡単だと思います。
 次回、ご説明します。

「医療保険やがん保険は、ギャンブルより損が出やすい」「貯蓄性がある保険は、お金が増えにくい」――。

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後田亨(著) 日本経済新聞出版 1650円(税込み)

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