「万全の備え」は不可能

 ところで、老後、他人事ではなくなる介護や認知症などにはどう備えたらいいのでしょうか。結論から書くと、筆者は、民間の「介護保険」や「認知症保険」に加入する気はありません(「医療保険」「がん保険」も、給付金を調達するための諸費用が高過ぎるので利用しない、と決めています)。
 保険会社は、長寿化が進行する前提で、これらの保険の料金を高めに設定するはずだからです。実際、ビジネス誌などのランキングの上位の商品で試算すると、給付金を受け取る年齢になる頃には、保険料総額が給付額を超えます。

 筆者は、すでに「健康保険」「公的介護保険」「公的年金保険」の3つに加入済みです。いずれも、民間の営利企業には不可能な仕組みであり、先進国の中でも相対的に恵まれた制度だと認識しています。したがって、介護費用などには、公的保険と自己資金での対応が賢明だと考えているわけです。

 老後に関して「漠然とした不安」を語る人が多いのは、未来のことは誰にも分からないからでしょう。そうであれば、「不安はあって当たり前」です。分からないものに「万全の備え」などできるわけがなく、ありもしない正解を求めて悩むのはバカバカしいと感じます。
 不安に苛(さいな)まれるより「自分にできること・できないこと」を分けて考えてみるといいと思うのです。例えば、公的年金保険について学ぶことはできます。現役で仕事をする期間を延ばし、受給開始時期を遅くする努力も、意識的に取り組めます。
 それに、長寿化で「老後が長くなる」と言う人もいますがどうでしょうか。「昔の60代とは余命が違うのだから、老後の訪れが遅くなっていて、準備期間は長くなっている」という見方もあっていいと思うのです。

 一方、年金受給額は景気や賃金の影響を受けますが、景況などは運に任せる以外にありません。

 そもそも、老後の心配をしていられるのは、今日・明日の生活には困っていない証拠です。戦乱がない時代にこの国に生まれ、当面、大きな問題を抱えていない時点で、かなり運がいいと思うのです。

 筆者は、自分の老後について「思い通りにいくわけがない、心も体も衰えて当たり前、(周囲の人も含め)痛みや苦しみが少なければ幸運至極」と考えています。そして、できれば、ありふれた日常を深く味わえる老人になりたいと思っています。

「医療保険やがん保険は、ギャンブルより損が出やすい」「貯蓄性がある保険は、お金が増えにくい」――。

「高額商品」であるにもかかわらず、生命保険はその中身が分からない「ブラックボックス」だ。保険の有料相談を行う保険コンサルタントである後田亨氏が、具体的な商品を取り上げながら、生保のカラクリを明らかにして好評を博した同名書の最新版。「結局、その保険に加入するのは得なのか?」が分かり、「いつの時代にも通用する根本的な保険との付き合い方」を学ぶことができる1冊。

後田亨(著) 日本経済新聞出版 1650円(税込み)

この記事はシリーズ「生命保険は「入るほど損?!」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。