一般の人たちが不利で高額な保険契約を結ぶ要因の一つに「老後資金」への不安がある。そこで今回は、後田亨氏の著書『生命保険は「入るほど損」?!<新版>』で取り上げられた、著者自身の老後資金計画をご紹介する。フリーランスの著述業者の文字通りリアルな事例は、一般論より参考になるかもしれない。
お客様や各種媒体の人たちから「老後資金はいくらあると安心でしょうか?」と尋ねられるたび、不思議に思います。本人にしか分からないはずだからです。どんな暮らしをしたいのかなど、自分と向き合う以外にないと思うのです。
そこで本稿では、筆者の公的年金受給額をもとに老後不安への対処法を記します。富裕層でも貧困層でもない個人の具体例として、参考にしていただける部分があると嬉(うれ)しいです。
自分の年金受給額を把握しているか?
まず、例えば「公的年金だけでは2000万円不足する」といった情報は無視します。「自分以外の人たちの平均値を使った試算」から何を学んでいいのか分からないからです。
そんなことより、しっかり確認したいのは「自分の年金受給額」です。「ねんきんネット」に登録しておくと、随時、試算できます。筆者の場合、転職などにより年金の種類と受給期間もまちまちなので、表にまとめてみました。
まず、63歳から2年間「特別支給の老齢厚生年金」約4万8000円(月額)が支払われます。(表の①)

1986年に厚生年金の給付開始時期が60歳から65歳に改定された関係で、1959年生まれの筆者は「経過措置」の対象に該当し、「埋め合わせ分」を受給するのです。
次に65歳からは、老齢厚生年金が約4万8000円、老齢基礎年金が約6万5000円で受給総額は11万3000円です。正直「少ない!」と動揺します。
ただし、ねんきんネットに反映されない「加給年金」もあります。一定期間、厚生年金に加入していて、年下の配偶者(年収850万円未満)がいるといった要件を満たす場合に給付されます。筆者の場合、月額3万2500円です。
妻が65歳になるまでの期間限定給付なので、老齢厚生年金は65歳から受け取ることにします。すると、76歳までの年金月額は8万500円になる見込みです。(表の②)
一方、老齢基礎年金は70歳から受け取るつもりです。受給開始を65歳から5年間遅らせると42%も金額が増えるからです。
そうすると70歳以降の受給額は、加給年金がある76歳までは月額17万2500円(表の③)、77歳以降は約14万円(表の④)となります。
受給時期を遅らせる選択について「早死にすると損」と言う人もいますが「そういう問題ではない」と理解しています。公的年金は「社会保険」の名の通り、各自が老後に備えるための積立制度(自助)ではなく、人々が互いに長生きリスクに備えるための保険(共助)だからです。
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