常識で考えてあり得ない

「2人に1人ががんに罹る時代、がんは人ごとではありません」

 常識でストーリー性にダメ出しできると思います。がんに罹る人が少ないほうが、安い保険料で手厚い保障を得られるはずだからです。
 「保険金の支払いが多くなりそうな保険を積極的に薦めるのはヘンだ。CMの費用を負担するのは誰だ?」といった疑問が浮かんで当然なのです。

 ある保険会社でがん保険の商品設計を手掛けてきた人によると「がんは基本的に高齢者の病気なので、確率論が働きやすく高い収益を見込める商品になる」そうです。
 要は、保険会社にとってずいぶん余裕がある、顧客側から見るとかなり割高な保険料設定になっているのです。

 たしかに、診断時に給付金を受け取れるプランを選べる複数の商品で試算したところ、おおむね「100万円の受給権を200万~300万円で買うような仕組み」と見られました。

 保険会社の人たちは、不安に駆られた人は保険加入に前のめりになると認識していて、あえてストーリー性に難がある情報を流布しているのかもしれません。

「少子高齢化と長寿化で、公的介護保険や健康保険の弱体化は避けられません。自助努力が必要です」

 例えば「現状、要介護状態になっても、公的介護保険制度のおかげで費用の負担は1割で済みます。ただ、今後は2~3割もあるかと思います」などと、自助努力を促す話法です。

 雑なストーリーだと感じます。「公的保険の今後」と「民間の保険商品の品質」には何の関係もないからです。

 もともと保険の仕組みは、給付が多発しやすい老後の保障には不向きです。また緊急性の問題もあります。例えば健康保険で、医療費の自己負担割合が突然10%から50%になるような制度変更はなされないと思うのです。

 現時点で、公的制度における自己負担費用が緩やかに増えていく見通しであっても「(負担増に備える)準備期間はある」という認識でいいはずです。

「『健康寿命』と『平均寿命』には男性で9年以上、女性で12年以上の差があります。長寿化は喜ばしいことですが、それだけ病気などのリスクが増えるということでもあります。医療・介護・認知症などへの備えが必要になるでしょう」

 やはりストーリーが粗い例です。「健康寿命の根拠」が怪しいからです。厚生労働省が行っている「国民生活基礎調査」の結果から算出されていますが、調査票をダウンロードして確認すると分かります。

 例えば「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という質問には「ある・ない」のどちらかで回答します。あると答えた人は、さらに、日常生活動作・外出・仕事・家事その他の項目で影響がある全てにマルをつけます。

 また、「あなたの現在の健康状態はいかがですか」という質問には、「よい・まあよい・ふつう・あまりよくない・よくない」の5つから回答を選びます。つまり、医学的な基準はなく個人の主観・体感次第なのです。

 民間の保険が保障するのは、「個人が自覚している健康上の問題や日常生活への影響」ではなく、入院や手術など「保険会社が認める所定の状態」です。筆者は、健康寿命を枕に展開される話に付き合うのは時間の無駄だと思っています。

3つのキーワードを意識することで、大半のセールストークは無視できる(AJR_photo/shutterstock.com)
3つのキーワードを意識することで、大半のセールストークは無視できる(AJR_photo/shutterstock.com)

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