現在、人間活動が地球環境に対して大きな影響を与えています。日本でも環境問題への関心が高まってきていますが、遠い北極域で起こっている現象を知ることにはどのような意味があるのでしょうか。そして、永久凍土の変化は生態系にどのような影響を与えるのでしょうか。今回は凍土の融解が極域の動物や炭素循環に与える影響に関する知見を紹介します。

1.永久凍土の変化が動物に与える影響

 気候変動の影響を受ける動物として、ホッキョクグマが有名です。そもそも、なぜ気候変動が加速するとホッキョクグマに影響があるのでしょうか。ホッキョクグマの主なエサはアザラシです。アザラシはパワーでホッキョクグマにはかないませんが、水中でガチの水泳勝負をすると圧勝です。あの美しい流線形の体のおかげです。そこで、ホッキョクグマは頭を使います。アザラシも哺乳類なので、定期的に呼吸する必要があります。ホッキョクグマはアザラシが呼吸するために水面に上がってくる瞬間を忍耐強く待ち続け、捕まえます。動物たちも自分の得意技で厳しい自然界を生き抜いているのですね。

(写真:Solent News/アフロ)
(写真:Solent News/アフロ)

 しかし、極地の環境に変化が起きています。気候変動の影響で海氷が減少しているのです。海氷が減少するとホッキョクグマはうまくアザラシを捕まえることができません。地域によっては海氷がない時期に約半年間もほぼ絶食状態で乗り切る場合もあります。氷が存在しない時期が長期化するほど、彼らの絶食期間も長期化します。北極圏の動物の中で最も氷に依存して生活している種のひとつであり、生態系の頂点に位置する捕食者として、北極圏の生態系変化を把握するための重要な指標にもなります。

 うまく食事にありつけずガリガリにやせ細った個体や、アザラシを求めて大海原を泳ぎ、そのまま溺死してしまう個体の観察例も報告されています。野生動物である以上、ある程度は仕方がないことですが、気候変動を緩和することで少しでもホッキョクグマがホッキョクグマらしく生活できる環境を保つことができれば、きっと私たち人間にとっても住みよい世界になるのではないでしょうか。

 ちなみに、つい最近、トナカイを捕獲するホッキョクグマの映像が撮影され、話題になりました。海氷が減少する中なんとか命をつなぐため、陸地のトナカイにも目を向け始めたようです。この事例を報告した論文のタイトルは「Yes, they can: polar bears Ursus maritimus successfully hunt Svalbard reindeer Rangifer tarandus platyrhynchus(きっと彼らはできる:ホッキョクグマがトナカイの捕獲に成功)」。環境が大きく変化する中、彼らは日々頑張って生き抜いています。ホッキョクグマの姿を通して環境問題のことを考える人々が増えれば、きっと気候変動の問題にも対処できるはず。Yes, we can!

続きを読む 2/4

この記事はシリーズ「永久凍土の変化から地球のこれまでとこれからを知る」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。