「永久凍土=ツンドラ」も誤解
永久凍土について、多くの方が誤解しがちで、かつ今後の環境変化の話でも重要になる点をいくつか示していきましょう。まず、永久凍土がある地域は、常に凍結しているところではない、ということです。
北極域の夏は日本に比べて日が長く、地表面が温められます。当然気温や地表面温度は0℃以上となり、シベリア内陸部など場所によっては夏の日中に30℃を超えるところも珍しくありません。すると、毎年地表面付近は夏に融解して、冬に凍結を繰り返すことになります。この地表面付近の土壌層を「活動層」と呼びます。活動層の下に常に氷点下の永久凍土層があるのです。活動層の深さは、後でも述べる通り永久凍土地域の環境変化の鍵となりますので、ぜひ気に留めておいてください。
また、別のよくある誤解として、「永久凍土の分布する地域はツンドラである」があります。北極点を中心に見下ろした地図によると、北極海をぐるりと取り囲むように大陸が分布しています(図1)。永久凍土は、おおむね北から連続的に分布する(どこを掘っても凍土にあたる)地域、条件の悪い(地形による日当たりや植物がないなど)ところでは凍土が存在せず不連続的に分布する地域、気候条件としては凍土の分布限界であるが、点在的に分布する地域と広がっています。
しかし、永久凍土は北極から見てドーナツのように同心円的な分布をしてはいません。これは、現在の気候と永久凍土の分布にはズレがある、ということでもあります。このズレは、現在の地質時代である第四紀における氷期と間氷期の数万年ごとの繰り返しという長期的な気候状態と関係しており、かつての氷期の氷床分布の有無と対応しています。
連続的な凍土帯が南に大きく張り出しているのは、北東ユーラシアの東シベリア・レナ川流域以東で、この地域は、氷期に氷床が分布していなかったため特に凍土の発達が良い地域として知られています。加えて亜寒帯針葉樹林(タイガ)の地下に永久凍土が維持されており、背の低い植生しか生えることができないツンドラ帯とは全く異なる生態系と共生していることも大きな違いです。
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