北極は温暖化が増幅されている地域として、大きな注目を集めています。雪や氷の世界が一変していく様子は、衝撃的な映像とともに温暖化によるカタストロフィックな事象がいたるところで起きている印象を持たれているかもしれません。しかし、その実態と人間活動との関わりはどのようなものでしょうか?

 このたび、その対象として「永久凍土」から見た、地域スケールから地球規模までの環境変化について、最前線で研究をしている自然科学、社会科学の研究者によるリレー形式で連載を開始させていただくことになりました。今回はその初回として、なぜ永久凍土をテーマとしてとりあげるのか、永久凍土とはどのようなものか、そして永久凍土地域の環境が変わるとはどういうことかについて紹介したいと思います。

そもそも永久凍土とは?

 永久凍土が分布しうる地域は北半球の約25%に及ぶといわれており、その舞台は北極域の大陸上です。北極は地球全体の平均に比べて2倍の強さで温暖化が進行している地域といわれています。

 北極の気候環境変動の実態と予測については、日本もオブザーバー国として参加している北極協議会(AC: Arctic Council)の傘下にある北極モニタリング評価プログラム (AMAP: Arctic Monitoring and Assessment Programme)が総合報告書を公表しています。“Snow, Water, Ice and Permafrost in the Arctic”と題されたもので、2011年に第1報告書、2017年に第2報告書が出ています。このタイトル中に永久凍土(Permafrost)があるように、北極の環境変化にとって、永久凍土は大変重要な研究対象となっています。例えば、多くの地域で凍土の温暖化が進行しており、凍結期間の減少や融解深の増加が観測されています。

 その一方で、永久凍土は観測しづらい地下の状態を示すため、未知の生物・物理・化学的な現象が起きる可能性も指摘されています。凍土に含まれる有機物の量と、それらが二酸化炭素やメタンなどとして放出されるプロセスはいまだ不確定性が高く、2021年8月に公表されたばかりのIPCC第6次報告書においても、永久凍土地域で起きる過程についてようやく考慮され始めた段階なのです。

 前置きが長くなりましたが、永久凍土とは何か、についてお話していきたいと思います。永久凍土とは、学術的には、「2年以上凍結した土壌または地盤」であり、地中の温度の状態を指します。こう書くとなんともロマンのない用語に感じられると思いますが、重要な点ですので、この定義を押さえておいてください。永久凍土の有無については、地下の温度が氷点下であるかが決定的であり、この意味で、永久凍土が「とける」という場合、英語では「溶ける」を意味する「melt」ではなく、「融ける」にあたる「thaw」を用います。

続きを読む 2/3 「永久凍土=ツンドラ」も誤解

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