公正な競争によってこそ「トゥキュディデスの罠」は避けられる

 それでも、我々のシステムの中国に比べた強さを認識することよりも、その強さを守り抜く決意のほうが重要である。我々は、中国が「総合国力」の追求を通じて成し遂げたことから学べるのであり、とりわけ中国との競争は、アメリカとその他の国々が後れを取る分野で改善を促す刺激になるだろう。

 具体的な取り組みには教育改革やインフラの改善、そして、自由市場の原則と矛盾せずに公共と民間の投資を巧みに統合する健全な形での経済的な国益追求の取り組みが含まれるだろう。

 中国との競争は危険をはらんでいて、「トゥキディデスの罠」に向かうのに等しいと強調する人々もいる。「トゥキディデスの罠」とは、台頭する国(中国)と衰退する国(アメリカ)の間では軍事衝突が起きる可能性が高いことを表現する造語で、世界の勢力図の構造的な変化の歴史をたどれば見えてくるという。

 台頭する国と衰退する国に与えられた潜在的な選択肢の中で最も両極端なのは戦争に突き進む、ないしは、不本意ながら相手を受け入れることだろう。しかし、そのどちらでもない中間を見つけ出すことが罠の回避につながる。

 私は中国側のカウンターパートたちと協議した際に、公正に競争することこそ米中が対決せずにすむ最良の手段だと説明した。もしアメリカが中国の南シナ海での国際法および国家主権の侵害(例えば人工島建設のための埋め立てや軍事拠点化)に無頓着なままでいたなら、かえって紛争が起きた公算が大きかっただろう。もし中国が国家機関を使ってアメリカの重要な技術を盗んでいるのを我々がとがめないままでいたなら、彼らの秘密裏の活動は縮小されたどころか、より攻撃的になっていただろう。

 両国が透明性の高い形で競争を進めれば、対立がエスカレートする事態が避けられ、互いの利益が重なる差し迫った課題での協力も可能になる。米中が競争しているからといって、気候変動や環境保護、食料・水資源の安全、感染症の世界的流行の予防と対策、さらには北朝鮮の核・ミサイル開発といった問題での協力を排除する必要はない。

公正に競争することによって米中は対決を避けられる(写真:pixfly/Shutterstock.com)
公正に競争することによって米中は対決を避けられる(写真:pixfly/Shutterstock.com)

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