バブル崩壊以降、多くの企業が労働条件を悪化させている。だが労働者の闘う意欲は衰える一方だ。2020年に行われた半日以上のストライキは全国でたった35件しかない。経営陣の思惑に流されるがまま、日本の平均年収はついに韓国にも抜かれた。羊になってしまった労働者を、革マル派の元活動家が一喝する。
待ち合わせをしていた喫茶店に、初老の男性はやや遅れて現れた。サングラスを片手にTシャツ、パーカーをラフに着こなしている。
「やあ」
「お久しぶりです」
1977年に18歳で旧日本国有鉄道(国鉄)に就職したという。分割民営化で誕生したJR東日本の時代を含めて、若かりし日は機関士や運転士、車掌を務めていた。30代後半からはJR東日本の最大労組であるJR東労組の専従者となり、中央執行委員などを歴任した。
当然ながら周囲には、共産主義革命を目指す極左暴力集団、革マル派の構成員であることは隠していた。
本間雄治氏、63歳――。
JR各社の組合に浸透した革マル派の中でも、優秀な活動家だけを集結させた「マングローブ」と呼ばれる秘密組織に所属していた人物だ。

革マル派にとって組合は、勢力を拡大するための「大衆組織」である。革マル派の影響力が及んでいる組合の中でも、最も規模が大きいとみられるのがJR東労組だ。マングローブのメンバーは一般の組合員らに革マル派の思想を広め、指導する役割を担っている。
ある人物に仲介を頼んで本間氏と接点を持つことができた。今回で会うのは2回目となる。階級闘争のど真ん中にいた革マル派・元闘士にどうしても聞きたいことがあった。
「なぜ日本の労働運動はここまで堕落してしまったのですか?」
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