コンテクストは日本語で「文脈」や「背景」を意味する。コンテクストの度合いが高いハイコンテクストな国では、言葉ではっきりと伝えずとも、言外の文脈や背景から受け手がメッセージの真意を理解する対話スタイルを取る。「忖度(そんたく)する」「行間を読む」「察する」などがこれに相当する。

 日本は世界で最もハイコンテクストな国の一つだとするホール氏の主張は、世界中の文化人類学者や言語学者に広く受け入れられている。民族の多様性が低く、島国として外界との交流が少なかっただけに、同一の文化的背景を共有する日本人が多く、ハイコンテクストな社会が成立したとする説が有力だ。

 日本とは対極の「ローコンテクスト」の国に位置づけられているのが米国だ。建国からまだ250年足らずと歴史が浅く、民族や文化の多様性が高いため、互いにはっきりと口にしないと真意は伝わらない。

 こうしたローコンテクストの国に比べて、日本では否定的なことでもほのめかすだけで伝えられるので、人間関係や組織の調和を保ちやすいとされる。

 その半面、ほのめかすだけでは動かないような大きな問題に直面してもなお、「おかしい」「やめましょう」などとはっきりと主張せずに、問題を先送りにしがちだという弱点がある。「愚痴を聞いてもらって、ガス抜きする」という体(てい)で、それとなく不満を表出しているだけでは、何も変わらないのである。

「不正指示してない」と弁明した東芝社長

 誰も意見を明確に言わずに、会社の不正を是正できなかったのが関電だとすれば、はっきりと物申さずとも不正を働かせることができた組織が東芝だと言える。

 東芝では14年度までの7年間に、合計2248億円の利益を不正に水増ししていた。不正会計に関与していた歴代3人の社長はいずれも問題発覚後に「部下らに『チャレンジ』などと称して利益目標の達成を求めただけであり、不正を指示したとの認識はない」との趣旨の主張を展開していた。

東芝の不正会計に関与した歴代3社長。左から西田厚聡氏、田中久雄氏、佐々木則夫氏(写真:共同通信)
東芝の不正会計に関与した歴代3社長。左から西田厚聡氏、田中久雄氏、佐々木則夫氏(写真:共同通信)

 例えば09~13年に社長を務めた佐々木則夫氏は、「『日ごろから不正はダメだ、順法でやってください』と言っている」と、問題を調査した第三者委員会に証言している。製造委託先に部品を高く売りつける「バイセル取引」が横行していたことについても、「バイセル取引により、利益をかさ上げするよう指示したことはない」と強調する。