気がつけば、日本は新型コロナウイルス対策の“優等生”となっていた。ワクチンの接種率で米国を一気に追い抜いたし、死者数も米国をはじめとする主要7カ国(G7)の中で、圧倒的に少ない。日本人が長年をかけて、疫病などの天災に強い社会を築いてきたおかげと言える。しかし、その過程で私たちは「幸福」という大事なものを犠牲にした。日本の幸福度はG7の中で最低だ。日本人の「奇妙な生存戦略」を解き明かす。
モーガン・ゼガーズ氏は24歳の米国人女性だ。テキサス州に住んでおり、「将来は子どもをたくさん産みたい」と夢を語る。「妊娠にどんな影響が出るか分からない」として、新型コロナウイルスのワクチンは接種していない。
ゼガーズ氏のように、安全性への懸念などを理由にワクチンを打たないと決めた米市民は多い。そのため米国では夏ごろから接種率が伸び悩んでいる。
米国でワクチン接種が始まってから約9カ月後の9月20日時点でも、規定回数の接種を完了した人の割合は54.0%だ(英NPO法人グローバル・チェンジ・データ・ラボ調べ)。米国より2カ月遅れて接種を始めた日本では、この日に接種率が54.6%に達し、米国を抜いた。
接種ペースが失速していることにバイデン米大統領は焦っている。9月9日には連邦政府の職員や、100人以上の企業に勤める従業員に接種を事実上義務づける方針を発表した。
強硬策に乗り出したバイデン氏に対してゼガーズ氏は、「権威主義的かつ全体主義的だ」と辛辣だ。無理もない。ゼガーズ氏は米国の社会主義化を食い止めることを目的に活動する保守系のNPO法人YAASのCEO(最高経営責任者)である。革新系と見なすバイデン氏と政治的に全く相いれず、「接種の義務化は個人の自由を尊重する米国憲法の理念に反する」とこき下ろす。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り3139文字 / 全文3920文字
-
「おすすめ」月額プランは初月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
日経ビジネス電子版有料会員なら
人気コラム、特集…すべての記事が読み放題
ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「吉野次郎の新ニホン論」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?