経済や防衛に深く関わる半導体。米国、中国など世界で独自の産業基盤をつくる動きが相次ぐ。回路形成の材料「フォトレジスト」大手のJSRで名誉会長を務め、4月に半導体国産化を目指すRapidus(ラピダス)の社外取締役に就く小柴満信氏に、日本の針路を聞く。

小柴満信(こしば・みつのぶ)氏
小柴満信(こしば・みつのぶ)氏
1955年生まれ。千葉大学大学院を修了し、81年に日本合成ゴム(現JSR)入社。電子材料事業部長などを歴任。2009年社長、19年会長、21年に名誉会長。19年から経済同友会副代表幹事として経済安全保障を担当する。出光興産などで社外取締役も務める。(写真:山下 裕之)

現在の世界情勢をどう見ますか。

小柴満信JSR名誉会長(以下、小柴氏):米中の2つの超大国による苛烈な覇権争いの局面に入っており、経済成長とともに力を蓄えてきた中国に対し、経済や軍事の趨勢を左右する半導体に米国が照準を定めている。

 米国が中国に対して警戒感を強める背景にあるのは、中国に「裏切られた」思いがあると私は考えている。1930年代から続く対中政策は「エンゲージメント」と呼ばれる融和的な政策が中心だった。しかし、米中の経済的な結びつきが強まるなか、半導体など先端技術が中国に不正な形で流出した。米国の警戒感に火を付け、覇権争いの局面に変わった。

経済安全保障を巡って半導体が注目されるのはなぜでしょうか。

小柴氏:半導体が産業のコメという位置付けから、社会になくてはならないインフラまで地位が上昇したためだ。家電やスマートフォンに使われるだけでなく、国民生活を支えるデータセンターでも不可欠。さらに、高性能な半導体がなければ高精度な兵器をつくることもできず、国民の命を守れなくなる可能性がある。

 国民生活を支えるインフラという性格上、政府の支援も欠かせない。その意味で、先端半導体の受託製造会社を目指すラピダスには期待している。政府が補助金を出し、NTTやトヨタ自動車、ソニーグループなど日本企業も出資して2022年から始動している。

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